【事例研究】SKIMSの作り方を解明する──キム・カーダシアンのブランドはShopifyで何をしているのか
グロースノウハウ

【事例研究】SKIMSの作り方を解明する──キム・カーダシアンのブランドはShopifyで何をしているのか

メガインフルエンサーが自分のブランドを立ち上げて、最初だけ売れて失速する。よくある話です。ところがSKIMS(スキムズ/skims.com)は違いました。2019年のローンチ初日に数分で200万ドルを売り切り、6年で年商10億ドル・評価額50億ドル規模へ駆け上がっています。キム・カーダシアンという史上最強クラスのフォロワー網を持ちながら、このブランドはそれに寄りかかって終わらなかったのです。

では、無数のインフルエンサーブランドがある中で、なぜSKIMSだけが突き抜けたのか。そしてSKIMSはShopify上で実際のところ何をしているのか。Shopifyマーチャントの目線で解明していきます。先に結論を言うと、答えはフォロワーという火種を、世界観と希少性で二重に燃やし続けたこと、そして売り込み臭を消したまま熱量を循環させる仕組みを作ったことにあります。

そもそもSKIMSは何を売っているのか

SKIMSはキム・カーダシアン氏とジェンズ&エマ・グレデ夫妻が立ち上げた補正下着ブランドです。面白いのは出発点で、身体を締め付けて平らに見せるという従来のシェイプウェアの発想をひっくり返し、体型をそのまま肯定して快適に整えるソリューションウェアとして自らを定義しました。サイズはXXS〜5XL、肌に溶け込む9色のヌードカラーを揃え、Fits Everybody、つまり誰にでも合うことを哲学に掲げています。

SKIMS NikeSKIMS collection

SKIMSが売っているのは下着そのものではなく、どんな体型でも肌色でも自分が肯定されるという体験です。この一点が、のちに語るファンの熱量やUGCの量に効いてきます。製品が本物の悩みを解決しているからこそ、キムへの熱が冷めてもブランドが残る。ここが他のインフルエンサーグッズと決定的に違うところです。

フォロワーが多いだけのブランドから突き抜けた理由

ほとんどのインフルエンサーブランドは、ファンビジネスモデル一本で戦います。フォロワーに向けてグッズのように売る。これは強力ですが、本人の熱が冷めれば一緒に冷めるという弱点を抱えています。

SKIMSが本当に面白いのは、3.6億フォロワーという最強のファン資産を持っていながら、そこに性質の違う2つのグロースモデルを重ね掛けしたことだと思います。

  • ファンビジネスモデル(土台)──キムの発信が即座に世界中へ届き、ファンの熱量がそのまま購買になる。広告に頼らず低い獲得コストで初速をつくる原資です。
  • 世界観モデル──肌色の包括性、ボディポジティブ、ミニマルという、キム個人を超えたブランドの思想。製品を着ること自体がアイデンティティの表現になり、ファンが入れ替わってもブランドが残ります。
  • 希少性モデル──週次ドロップ、即完売、ウェイトリスト。買えた喜びがUGCを生み、それが次の認知につながる循環を作ります。

StoreHeroのグロースモデルの考え方では、相反するモデル(たとえば価格優位性と世界観)の併用は避けるのが原則です。ファンビジネス・世界観・希少性は、いずれもプレミアムでエンゲージメント重視という同じ方向を向いているため、きれいに噛み合います。SKIMSは相性の良い3枚のカードを重ねた、稀有な成功例だと理解できます。

最大の学びはこうです。フォロワーが多いことは出発点にすぎません。それを世界観と希少性で資産に変換できるかどうかが、一発屋と長寿ブランドの分かれ目になります。ここからは、その変換をSKIMSがShopify上でどう実装しているのかを施策ごとに解明します。

解明① キム頼みを捨てる勇気──アフィリエイトを堂々と回す

インフルエンサーブランドは普通、アフィリエイトや割引コードの導入にとても慎重です。割引コードがブランドを安っぽく見せる、誰が紹介するか管理できない、本人のイメージを毀損しかねない、といった懸念があるからです。

ところがSKIMSは、招待制のアフィリエイト/アンバサダー制度を堂々と運用しています。最大20%前後のコミッション、30日間のCookie、参加には影響力やブランド価値観の審査を通る必要がある、という設計です(参考:SKIMS Affiliate Program)。なぜ慎重になりがちなこの領域を、SKIMSは攻めに転じられたのでしょうか。鍵は3つの工夫にあると考えられます。

  • 招待制で、誰が代表するかを握る──応募は自由でも参加は選抜制。ボディポジティブやインクルーシブという価値観への共感を条件に審査することで、ブランドを毀損する紹介者を排除しています。だからこそ数を増やしても安心して回せます。
  • ブランドの顔をキム一人に集中させない──多様なモデルと多層のクリエイターに発信を分散させているため、紹介者が増えてもキムの個人商店という印象が薄まらず、むしろ世界観が増幅されます。ここが世界観モデルとの合わせ技です。
  • 値引きを浅く、限定的にする──紹介経由の割引は初回10%程度に抑え、定価とブランド価値を壊さない。安売りではなく入口の特典として機能させています。

結果としてSKIMSは、認知を成果報酬という変動費で買えるようになり、年々重くなる広告費の影響を受けにくい体質を手に入れたと考えられます。慎重になるべき施策を、設計の工夫で攻めの武器に変えた好例です。

Shopifyでの実装:アフィリエイト/アンバサダーはShopify公式のShopify Collabsで成果計測・紹介リンク・報酬支払いを一元管理できます。TikTok Shop連携や大規模運用ならSocial Snowballgoaffproも選択肢です。SKIMSに倣うなら、誰でも歓迎ではなく承認フローと参加条件を先に設計し、ブランドを守りながら数を増やすのがポイントです。

解明② 売り込み臭を消す──会員プログラムを「買え買え」にしない設計

インフルエンサーブランドが本当に恐れているのは、露骨な販売色が本人のイメージを傷つけることです。だから強い販促を打ちたがらないことが多いです。SKIMSはこのジレンマを、会員プログラムの設計で解いています。

SKIMSはアプリ内限定のロイヤルティプログラム「SKIMS Rewards」を運営しています。無料のMARBLE層でも新作・アプリ限定ドロップへの先行アクセスや返品手数料無料が得られ、上位のONYX層になると最速アクセス・全注文送料無料・優先サポートが解放されます(参考:SKIMS Rewards解説(Antavo))。注目すべきはONYXへの昇格条件が金額だけではないことです。

SKIMS Rewards loyalty program

昇格ルートは、年4回の購入、または年間500ドル以上の購入、または年10回のエンゲージメント(診断クイズ、レビュー投稿、ウェイトリスト登録、友だち紹介、メルマガ開封など)。お金を落とさなくても、ブランドに関わるだけで上位に行けるのです。これは課金圧を、愛情と参加に置き換える設計にほかなりません。

買え買えと急かす代わりに、関わってくれるほど報いる。販売色を出さずにロイヤルティを高められるこの仕組みは、まさにイメージを大切にするインフルエンサーブランドにとって理想的な解だと言えます。ポイント還元だけの会員制度がファンビジネスで効きにくいことを踏まえると、体験と先行アクセスを軸にした点も的を射ています。

設計の裏側には、欲望の二段構えがあります。失敗しない安心という手前の欲望で最初の一歩を踏ませ、所属感や自己実現という奥の欲望で長く繋ぎとめる。会員プログラムは、この奥の欲望を満たし続けるための装置なのです。

Shopifyでの実装:会員ランクはGrowaveVIPなど、会員限定ページ・限定商品の出し分けはLocksmithなどのアプリやliquidのカスタマイズで実装できます。昇格条件に使うエンゲージメント行動のうち、サイズ診断はPersonalizeHeroなどの診断アプリで設置し、その回答をCRMのトリガーにできます。金額だけでなく関与で昇格させる設計にするのが肝です。

解明③ ドロップと抽選──The North Faceが5分で消えた日

SKIMSの代名詞は、毎週のように新色・カプセル・再入荷を限定投下するドロップです。1回あたり数万〜20万点規模を売り切れる前提で投入し、年50回以上のドロップでFOMOを醸成します。その威力を象徴するのが、2024年のThe North Face × SKIMSでした。

SKIMS North Face collaboration

14型のコレクションは、発売からおよそ5分で完売したそうです。ティザー動画は800万回超再生され、発売前の活動だけで約540万ドルのメディア・インパクト・バリューを生み、ファンがSNSで再入荷を懇願する事態になりました。反響があまりに大きく、約1年後には第2弾が投下されています(参考:WWD:SKIMS × The North Face)。

これはファンビジネス×希少性の教科書のような瞬間です。販売数より欲しい人が多い状態を作れば、買えた人の自慢がUGCになり、それが次の認知を呼ぶ。完売は失敗ではなく燃料です。人気商品では、ウェイトリストに加えて抽選販売(ラッフル)も併用していると見られます。欲しい人を取りこぼさず登録させ、当落自体をイベント化する狙いです。

Shopifyでの実装:再入荷通知・ウェイトリストはKlaviyoやBack in Stock系のアプリで取得できます。抽選販売・予約販売はAppifyRuffRuff予約販売などで、会員先行販売はRuffRuff注文制限などで実装できます。新作の一斉告知(メール・LINE・アプリ)は通知漏れが命取りなので、配信オペレーションを定型化しておきましょう。

解明④ なぜ下着姿のUGCが、あれほど集まるのか

下着やシェイプウェアの着用写真を投稿するのは、本来かなり勇気がいる行為です。それでもSKIMSにUGCが洪水のように集まるのは、SKIMSが投稿のハードルそのものを下げる設計を積み上げているからだと考えられます(参考:Micro-influencers and the case of SKIMS)。主な仕掛けは5つです。

  • 自分が代表されている状態をつくる──XXS〜5XL・9色のヌード・多様な人種や体型のモデル起用により、見る人が自分と同じ体型の人が着ていると感じられる。この安心感が投稿の心理的ハードルを大きく下げます。
  • ブランド自身がお手本を大量に見せる──ローンチ時の100人規模のシーディングや多層インフルエンサーが、無修正の試着動画という投稿の型を先に示すため、一般ユーザーは真似するだけで投稿できます。
  • リポストで承認という報酬を渡す──優れた投稿を公式がリポストしてクリエイターをタグ付けする。見てもらえたという満足が次の投稿動機になり、熱量の連鎖が生まれます。
  • 自慢ではなくお役立ちの文脈にする──身長やサイズ、着用感を伝えるレビューは、見栄えの自慢ではなく同じ悩みの人への情報提供になります。露出への抵抗が、実用情報という大義で和らぎます。
  • ボディポジティブの世界観で恥を外す──隠すのではなく肯定するというメッセージ自体が、体型をさらすことへの羞恥を弱め、投稿を後押しします。

このようにSKIMSは、代表性・お手本・承認・実用性・世界観という5つの仕掛けで、投稿したくなる状態と投稿しやすい状態を作っていると思われます。

SKIMS campus collection

Shopifyでの実装:購入後のレビュー・UGC依頼はKlaviyoの購入後フローで自動化できます。集めたUGCはLooxSocial widgetLeeepなどのレビュー/UGCアプリで商品ページに掲載可能です。StoreHeroでは、アンバサダーやスタッフの投稿を承認するだけでコーディネートや特集としてサイト上にページ化できる仕組みを支援先に提供し、Shopifyに普段ログインしない人でもUGCを更新できるようにしています。

解明⑤ 売上の波を飼いならす──予測分析×ファーストパーティデータ

ファンビジネスモデルには、見落とされがちな弱点があります。ドロップや新作のたびに売上が大きく上下するため、在庫管理が最も難しいモデルのひとつだという点です。さらに下着はサイズ展開が多く在庫管理の難易度が高いアイテムです。

作りすぎれば値引きで粗利が溶け、作らなすぎれば即完売で機会損失が出る。興味深いことに、SKIMSのドロップモデルはもともと計算された戦略というより、需要に生産が追いつかなかった結果として生まれたと語られています。CEOのジェンズ・グレデは、十分な数を作れずに生じた品薄が、結果的に希少性という強みに転じたと振り返っています(参考:Sacra: Skims)。つまりSKIMSは当初から、需要と供給のギャップという課題に向き合ってきたブランドだと言えます。

この売上の波を抑える鍵になっているのが、バックエンドの予測分析とファーストパーティデータだと考えられます。1,100万人を超えるとされるウェイトリスト、告知への反応、過去ドロップの消化速度といった先行需要シグナルを集め、需要を予測して生産量を調整しているとみられます。

SKIMSが需要予測・在庫最適化を担うPlanning Analystを募集していることからも、データ起点の在庫運用に力を入れている様子がうかがえます(参考:Business of Fashion求人)。こうした取り組みによって、値引きに頼らないフルプライス販売と過剰在庫の抑制を両立していると、複数の二次分析では指摘されています(参考:SKIMS Sales & Marketing Strategy)。ただしSKIMSは非上場で在庫指標を公式に開示していないため、ここは公開情報からの推測を含みます。

予測が外れたときの調整弁も重要です。SKIMSは売れ残りを表向きの一律セールで捌くのではなく、会員限定セール、アウトレット、学割といったゲートをかけたクローズドな値引きで静かに処理していると見られます。

定価とブランドの希少性を守りながら、需要予測のズレだけを吸収する。つまり予測分析が攻めの在庫最適化、クローズド値引きが守りの在庫処理として、ワンセットで在庫リスクをコントロールしていると考えられます。希少性モデルで攻めるほど在庫は荒れやすいので、この守りの仕組みは重要な裏方になっているはずです。

Shopifyでの実装:ウェイトリスト・再入荷データはKlaviyoやBack in Stock系のアプリで取得し、Shopifyの販売データやGA4と束ねて需要予測の材料にします。クローズドな値引きは、会員タグ+自動割引やLocksmithで対象を限定して実装できます。StoreHeroでも,在庫残日数・販売期限・消化速度を統合モニタリングし、売れ残りの状況に応じて会員限定の再提案や値引き運用を行っています。

解明⑥ 語る理由を絶やさない──世界観コラボと文化的PR

ファンの熱量は、放っておけば冷めます。だからSKIMSは、語る理由と次に欲しい理由を絶やさない仕掛けを連発します。Fendi、Swarovski、Dolce&Gabbana、The North Face、そしてNike(NikeSKIMS)。世界観を拡張するコラボを次々に投下し、そのたびにファンの会話を再点火させています。

SKIMS user generated content

さらにSKIMSは、ニップルブラのように文化的な議論を呼ぶPRで、広告費をほとんどかけずに巨大な認知を獲得することにも長けています。これはShopifyの機能というより企画力の領域ですが、ファンビジネスでは商品そのものが話題のネタになる設計が強烈に効く、という良い見本です。SKIMSにとって新商品は、売り物であると同時に、ファンが語り、拡散するためのコンテンツでもあるのです。

販売方法フレームで裏づける──SKIMSの本命は3つの◎が重なる場所

StoreHeroは、グロースモデルごとに相性の良い売り方(販売方法)を整理しています。面白いのは、SKIMSが実際にやっている売り方が、ファンビジネス・希少性・世界観という3つのモデルの本命の売り方をそのまま重ね合わせたものになっていることです。感覚ではなく、売り方の相性表の上でも3モデルの重ね掛けが説明できます。

グロースモデル そのモデルの本命の売り方 SKIMSの実践
ファンビジネス ファン・インフルエンサー販売/参加券型販売 3層インフルエンサー+招待制アフィリエイト/SKIMS Rewards(会員参加権)
希少性 限定販売・抽選販売 週次の限定ドロップ、ウェイトリスト、抽選。The North Faceは約5分で完売
世界観 世界観・ライフスタイル販売 Fendi・The North Face・Nikeなど世界観を広げるコラボ

そして見逃せないのが、SKIMSがやらない売り方です。グロースモデルと販売方法の相性表で、ファンビジネスに不向きとされる代表格が比較・ベンチマーク販売、つまり競合と価格やスペックを並べて優位を示す売り方です。SKIMSは低価格の模倣品に囲まれていますが、あえて価格比較の土俵には乗りません。安さで張り合った瞬間にブランドはデュープと同じ棚に並んでしまうからです。やることを絞るのと同じくらい、やらないことを規律正しく決めている。これもフレームで見ると明快に浮かび上がる、SKIMSの強さです。

では、なぜ他のインフルエンサーブランドにはできなかったのか

多くのインフルエンサーブランドは、次の3点でつまずきます。第一に、ファンの熱量に頼るだけで世界観や希少性を重ねない。第二に、本人のイメージを気にして販売の仕組み化を避ける。第三に、目先の売上のために安売りして定価とブランド価値を壊す。

SKIMSはそのすべてを逆張りしました。ファンビジネスに世界観と希少性を重ね、販売色をエンゲージメントに変換し、値引きをクローズドに閉じ込めた。フォロワー数そのものではなく、フォロワーを資産化する仕組みで勝ったのです。逆に言えば、巨大なフォロワーがなくても、この仕組みの考え方は再現できます。

しかもSKIMSの打ち手は、無謀な賭けではありません。会員プログラムも限定ドロップもアフィリエイトも、損失は限定的で、続けるほどデータや紹介者ネットワークという資産が残り、成果を数値で測れる。だから安心して回し続けられます。派手に見えて、実は計算されたリスクの上に立っているのです。

StoreHeroのグロースノウハウとどう絡むか

StoreHeroは、Shopify事業者の成長設計を15のグロースモデルから捉え、自社がどのモデルに当てはまり、どれを重ね掛けすべきかを見極めるところから支援します。SKIMSの分解で見たように、ファンビジネスモデルは単体ではもろく、世界観や希少性と組み合わせて初めて長続きします。

そのうえで、会員プログラムの体験設計、限定ドロップと抽選の運用、アフィリエイト/アンバサダーの仕組み化、UGCのサイト掲載とCRM・広告連携、そして予測分析とクローズド値引きによる在庫コントロールまで、SKIMSが実践している打ち手を、Shopify上で再現できる形に落とし込みます。

自社にはこんなフォロワーはいない、と感じたかもしれません。けれど大切なのはフォロワーの数ではなく、熱量を資産に変える設計があるかどうかです。もし自社のファンの熱量を売上につなげきれていないと感じているなら、まずはShopify無料ストア診断から、自社に合うグロースモデルの重ね方を一緒に解明してみませんか。