Shopifyストアにおける実践的なSEO分析と最適化~株式会社JADE 山田陸氏が語る、検索流入最大化のヒント~

はじめに

今回ご登場いただくのは、長年にわたって大規模サイトのSEO対策に携わり、データドリブンなアプローチを得意としている株式会社JADEの山田陸さん。新卒でグルメサービス「Retty」に入社し、4,000万MAUから5,000万MAUへと急成長するタイミングでSEO担当として力を発揮。その後コロナ禍を経て株式会社JADEに転職し、ECサイトや不動産・求人など、膨大なデータを扱うサイトのコンサルティングを中心に活躍されています。BigQueryやSearch Consoleの高度な分析手法にも精通し、SEO領域においては“データと向き合う分析型コンサルタント”として評価が高い方です。

本対談では、Shopifyを活用するECサイトにおいて、SEOデータ分析をいかに実践し、改善施策につなげるかを中心にお伺いしました。SEOのKPI設定からツールの使い方、クエリ分析やランディングページ改善のポイントまで、山田さんの豊富な実務経験に基づくノウハウをたっぷりとご紹介します。EC運営者の皆さまにとって、着実に検索流入と売上を伸ばすうえで役立つヒントが詰まった内容となっていますので、ぜひ最後までご覧ください。

ECサイトにおけるSEOのKPI設定と考え方

黒瀬
ECサイトのSEOを考えるうえで、まずKPIをどう設定するかが難しいと感じています。山田さんは、どのように整理されていますか?

山田さん
JADEではDCIR – QCLSというフレームワークを提唱しています(検索インタラクションモデル概論-JADEが日々使うSEO分析フレームワークの話 )。これはどんなサイトにも当てはまるフレームワークなのですがECサイトを運営していく上でも非常に参考になると思います。2つのフェーズで考えていただきたくて、1つ目は「検索結果に出るまでのフェーズ」、2つ目は「検索結果から流入後のフェーズ」です。これをベースにすると以下のようなKPIが設計できます。

検索結果に出るまでのフェーズ

  • Discover:URLの発見率。URLがGoogleにどれぐらい発見されているか
  • Crawl:クロール率。URLがどれぐらいクロールされているか
  • Index:インデックス率。URLがどれぐらいインデックスされているか
  • Rank:掲載順位。個々のURLがどのクエリでどの位置にいるか

検索結果から流入後のフェーズ

  • Query:どういうクエリでどの程度インプレッションが発生しているか
  • Click:クリック率。各クエリからどの程度クリックされているか
  • Land:ランディングしたURLで直帰されず、ユーザーの検索意図を満たすことができているか
  • Surf:回遊率。検索ジャーニーを継続し回遊してもらえているか

黒瀬
なるほど。SEOというと順位をひたすら追いがちですが、インデックス率やユーザー行動など色々と見る観点があるということですね。

山田さん
そうですね。平均順位というのは、実はあまり指標として本質的ではありません。1つのページが1つのクエリでしか出ないということは、ほぼありえないと思います。様々なクエリで表出した結果における平均順位でしかないです。CVに繋がりやすいクエリでは1位が取れている、CVに繋がらないようなクエリでは10位が取れているという場合、1位と10位の平均になるので平均順位は5.5位となりますが、CVに繋がりやすいクエリで良い順位を取れているから問題ないよねと考えることができます。

しかし平均順位は5.5位だからまだ伸びしろがあると頑張ったところでCVには繋がらないクエリの順位を上げる必要があるので成果には繋がらないんですよね。ECサイトなら特に、カラーやサイズなど商品属性が増えるほど、関連キーワードも増えますから、何のクエリでどのぐらいのインプレッションが発生し、どのぐらいのCTRで、どのぐらいのクリックが発生しているのかを把握すべきだと思います。

※平均掲載順位の詳しい求め方はインプレッションも影響してきますので詳しく知りたい方はこちらをご確認ください(Google Search Console の平均掲載順位で状況判断を誤らないために。〜「平均の罠」に注意〜

黒瀬
ECでは商品によっては在庫切れや廃盤になっていることもあるため、アクセスがただ増えれば良いという訳でもありません。そういった点を踏まえて、SEOにどう取り組むと良いでしょうか?

山田さん
在庫切れや廃盤のページは間接的に検索順位に影響してくる可能性があります。上記のサイト流入後のユーザー行動も非常に大事なのですが、在庫切れのページは検索結果に直帰されてしまう可能性が高く理想的なユーザー行動とは言えません。例えばいつもは安定して1位を取れている商品が品切れを起こしてしまった。そのタイミングでテレビなどの影響で一気に検索が行われページへ流入し大量の直帰が発生してしまった結果、検索順位が落ちてしまうなどは起こりうることです。

ユーザー行動の観点がSEOにおいても大事だということが意外と知られていないので是非意識してほしいです。EC系のサイトを利用する際には住所やクレジットカードなど重要な個人情報を記入することになるかと思います。ユーザーの立場からすると安心できないサイトで買い物したくないですよね。

そういったサイトの信頼感や安心感といったものがないとそもそもユーザーは回遊しよう、購入しようと思ってくれませんので、SEOのテクニック的なところに走るのではなく、まずはそういった基本的な部分を大事にすることもSEOで結果を出す上で非常に大事な要素だと考えています。

具体的な分析手法・ツール活用

黒瀬
具体的な分析は、ツールはGoogleサーチコンソールとGA4が中心でしょうか?

山田さん
はい、まずは自社データ(ファーストパーティーデータ)を最優先に活用すべきです。Search Consoleでは、インプレッション・クリック・CTRなどをディレクトリやページタイプごとに分解して分析を行うことを推奨します。

例えば、「カテゴリ・リストページ」、「商品詳細ページ」、「ブログ・コンテンツページ」などの単位で現状を把握するようなイメージです。全体のインプレッションやクリック、検索順位の変動を見ていても何もアクションに繋がりません。

他のカテゴリは特に変化はないけれど、Tシャツカテゴリのインプレッションだけが落ちているということが発生した場合、気温が下がって需要が下がったなどの季節的な要因(外部要因)なのか、インデックス率が悪化してそもそも検索結果に出なくなったのか、1ページあたりの表出するクエリ数が少なくなったのか(内部要因) などの仮説が立てられ分析を行うことができます。まずは全体で数値を追うのではなく、カテゴリ単位などで区切って分析する習慣を身に着けていただきたいです。

黒瀬
GA4での分析ポイントはいかがでしょうか?

山田さん
GA4ではランディングページごとの直帰率や滞在時間、CVRなどを見ます。ECの場合、絞り込み条件が多くなり、階層構造が深くなりがちなため、大カテゴリ→中カテゴリ→小カテゴリと段階を追って深掘りしていくのがコツですね。

最上位階層のカテゴリごとに比較しユーザー指標が悪いところを見つけたらどこが要因なのか少しずつ解像度を上げながら分析を掘り下げていくイメージです。特定のカテゴリは商品点数が少ないために直帰されやすい、CVされにくいなどの課題が発見できるかもしれません。

黒瀬
中級〜上級者向けにさらに深い分析をする場合は、どんな手段が考えられますか?

山田さん
以下2つを利用することでより深い分析が可能になります。

1つ目のInspection APIはURLがインデックスされているかどうか調査をすることができるAPIです。
APIを利用することによって大量のURLを一気に調査をすることができるというのが最大のメリットです。
ECサイトの特徴として膨大な量のURLが生まれやすいです。商品の数だけURLが存在し、サイズやカラーなどのパラメータが合わさるともの凄い量のURLが生成されます。そういったECサイトの特徴を踏まえると、JADEの提唱するフレームワークにおけるD-C-Iの部分、つまりインデックスまでの過程においてボトルネックを抱え、インデックスされていないコンテンツが大量に存在するのに気づいていない可能性があります。
もし今のインデックス率が40%である場合、80%まで上昇させることでクリック数を2倍にさせられるかもしれません。インデックスされていなければ掲載順位を上げることもできないので、まずはインデックス状況を正しく把握しましょう。そして、そのインデックス状況を正しく把握しようとするとSearch Consoleでは力不足であるため、Inspection APIの利用は避けられません。

2つ目のBulk Export DataはSearch Consoleのデータを漏れなくエクスポートしてくれる機能です。
実はSearch Console上で見れるデータは一部です。 しかし、このエクスポート機能を利用すると何のURLにどういうクエリで、どのぐらいのインプレッションが発生し、どのぐらいのクリックが発生し、平均順位は何位だったのかというのを全て教えてくれます。
ECサイトではURLの量が多いゆえに、クエリのバリエーションも非常に多くなりがちです。多くの流入を獲得する余地のあるクエリ群を発見できていなかったり、自社サイトの強みを見逃していることなどが結構あります。
また、Search Consoleは都度フィルタをかけてデータを表示させなければいけないので分析に時間がかかりますが、エクスポートデータを元にしてダッシュボードを作れる環境があると分析の工数を大幅に減らすことができます。

個人的にはこの2つ無しでSEOをやることは今となっては無理だと思うほどです。 立ち上げたばかりのブログサイトとかであればここまでの機能は無くてもいいかもしれませんがECサイトであれば必ず使いたい機能です。 本格的に検索エンジンからの流入を増やしたいのであればこれらを利用することを検討してみてください。

分析ツール「Amethyst(アメジスト)」の位置づけ

黒瀬
山田さんが所属されているJADE社で提供している「Amethyst」というツールがあると伺いました。簡単に概要を教えていただけますか?

山田さん
「Amethyst」は、JADEが提供するSEO分析ツールです。Inspection APIやBulk Export Data、GA4の利用は本格的なSEOをやる上で必須だと考えています。けれども利用するのにそれぞれハードルがあります。

Inspection APIを活用するには、APIからデータを取得する必要があるため開発が必要です。またAPIの仕様にクセがあることから、1回の開発で安定したデータ取得を実現するのは難易度が高いです。

Bulk Export DataはGoogle CloudのBigQueryにしかデータを吐き出せないという制約があります。そしてBigQueryに吐き出したデータを加工するためにはSQLが書ける必要があったり、データのストレージコストやクエリコストといったコストも念頭に置かなければなりません。

GA4は様々なところで言われているようにUAの時よりも使いにくくなったという感覚を持っている人が多いのではないでしょうか。それゆえにGA4をあまり触れていない、使いこなせていないという声が多く挙がります。

しかし、前述の通りこれらを使いこなせないとSEOをやることは不可能です。 そこでこれらを誰でも使いこなせるようにしたツールが「Amethyst」です。Amethystを利用すると、Inspection APIを一切の開発を必要とせずに利用することができ、安定してインデックス率の計測を行うことができます。 そして取得したデータを勝手にビジュアライズまでしてくれる機能があります。

よくインデックス率が悪い時クローラビリティが悪いということで内部リンクを必死に置いたりするケースが見受けられますが、それは本当に有効な手段なのでしょうか?分析を行うことでクロールに問題があるのか、クロールはされているけれどページの品質に問題があるのか、それらが瞬時に分かるようになっています。

Amethystを利用すると、Bulk Export DataをBigQueryを利用していなくても使うことができる上に、前述したコストを一切考慮せず、SQLに関する知識も一切必要とせずにデータを抽出することが可能です。 また抽出したデータをそのままダッシュボードとして保存する機能があるため、Search Consoleのように都度フィルタをかけるということをしなくても、毎日確認したいデータの定点観測が容易にできるようになります。
これによって施策を実施したページだけのダッシュボードを作っておくことで、施策効果が出ているのかの確認作業が朝の1分で完結するのは嬉しいですよね。

GA4のデータも、直感的に使いやすくし、SEOの観点で重要な回遊率やCVRといった指標をデフォルトで確認できるようになっています。 こちらも同じように簡単にダッシュボード化することができるため、特定のカテゴリ・リストページ群のセッション数やCVR、回遊率といった数字を毎朝1分程度で全て確認することが可能です。

黒瀬
ECサイトって在庫や商品ラインナップの移り変わりが早い分、継続的にモニタリングしたいポイントが多いですよね。「Amethyst」ならその効率化が図れると。

山田さん
そうなんです。今までも述べてきたようにECサイトは多くのURLが生成されやすいためにSEOのハードルが高くなります。

  • 新規でリリースしたURLのインデックス状況はどうなのか
  • どういうクエリでどのぐらいのクリックが発生しているのか
  • 流入したユーザーの回遊行動はどうなのか

ECサイトだから特別なことをしなければいけないというわけではないのですが、観測しなければいけないURLの量の多さ、そして仰るようにラインナップの移り変わりの早さがSEOの難易度を上げていると思います。そうするといかに効率的にそれらを把握し課題を迅速に抽出できるかが成功の鍵を握るのですが、そのためにはInspection APIなどの利用は必須だと考えます。

予算や開発工数が余っているような企業様であればこれらをインハウスで構築することは可能かもしませんが、そうでない企業様であればなかなかハードルが高いです。 これらのデータは非常に強力であるため使いこなせているサイトとそうでないサイトでは差が開くきっかけにもなりえます。

そこで多額の予算や開発工数をかけずともこれらのデータを使いこなせるようにしたのが「Amethyst」です。検索エンジンからの流入を本気で増やしたいと思った際にはご検討いただければと思います。

競合分析の扱い

黒瀬
ECサイト運営者から「競合が強くて困っている」という声もよく耳にします。競合サイトの分析はどのように活かせるでしょうか?

山田さん
私としては競合分析は“最後の最後”で良いと思っています。そもそも競合を見てドメインが強いと分かっても、すぐに取れるアクションがほとんど無いんですよね。まずは自社のデータを深堀りして課題を抽出し一つずつ潰していく方が成果に繋がりやすいと思います。

自社サイトの課題を全て潰し終えた後で、例えばクエリのカバレッジを広げていきたいけれど、競合が取れていて自社サイトが取れていないところはどこだろう、競合のクエリを分析しようなどはやってみてもいいかもしれません。

ECサイトでSEOを伸ばすために押さえておきたいポイント

黒瀬
最後に、ECサイトでSEOを伸ばすために押さえておきたいポイントを整理すると、どんな要素になりますか?

山田さん

  1. まずは自社サイトデータの正しい活用から
    Search ConsoleとGA4を使い、大カテゴリから徐々に解像度を上げてそれぞれの数値を確認しどこにボトルネックがあるかを確認します。ユーザー行動はSEOにおいて重要な指標の一つですので、検索エンジンからの流入数が多いのに回遊率が良くない、CVRにつながっていないなどがあれば要因を一つずつ潰していきましょう。
  2. 中級〜上級者はInspection APIやBulk Export Dataを活用
    検索エンジンからの流入を本気で増やしたいということであれば、これらの利用は必須です。Inspection APIを利用してインデックス状況を細かく把握しモニタリングできるようにする。Bulk Export Dataを利用してSearch Consoleの全量データを入手し潜在的なニーズや強み、弱みを把握できるようにする。これらを使いこなせるかどうかで大きく差が開くかもしれません。
  3. 「Amethyst」で高度な分析を内製化
    Inspection APIやBulk Export Dataの利用は必須だと思いますが、開発工数やコストがかかってしまうため簡単に利用しようという意思決定が行えない可能性が高いと思います。そこでこれらSEO分析に必要なもの全てを誰でも使えるようにしたのが「Amethyst」です。自社サイトのSEO分析に必要なものはこれ一つで十分ですし、それを最小限のコストで導入することが可能です。これを利用することでコンサルタントと同じクオリティのデータを確認できるようになりますので、予算的にコンサルタントに依頼するのは難しいという企業様にもオススメです。
  4. 競合分析はあくまでも二の次
    ECの場合は自社内でやるべき施策(インデックス率の最適化やページ品質改善)が多いため、競合は意識せず、まず自社サイトの改善に集中すべきです。競合分析は全体のトレンドや新しい着眼点を得るために利用する程度でOKです。

黒瀬
すごく分かりやすいです。このステップに沿れば、着々と改善できそうだと思いました。

まとめ

SEOは単に検索順位を向上させることを目的にやっているわけではないと思います。 検索結果から流入を発生させ、売上に繋げていくことが目的だと思います。 であれば、検索順位という漠然とした数字を追うのではなく上述した手順で分析を行っていくことで目的に近づけると思いました。

本インタビューを通じて、Search ConsoleやGA4を活用した分析手法や、どの指標をモニタリングし改善すれば良いかについて、実践的な知見を共有いただきました。特に、「検索結果に出るまで」「検索結果から流入に至るまで」「サイト流入後」に関する指標をモニタリングし、商品属性や在庫など、ECとしてのビジネス観点も踏まえた施策に落とし込み、検索からの収益を最大化するアプローチが、ECでは有効だと改めて分かりました。

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