ヒーローインタビュー株式会社土屋鞄製造所様「川上から川下まで。製造小売業ならではのグロース施策とは? レザーバッグブランド・土屋鞄製造所のチャレンジ」

StoreHeroでは2022年3月より、土屋鞄製造所はじめ、ハリズリーグループが運営・支援・投資に関わる複数ブランドのグロースを支援しています。成長段階が異なるブランドを実店舗を含めたマルチチャネルで展開しながら、どのようにグロースに取り組んでいるのか。それにより、組織はどのように変わったのか。土屋鞄製造所objcts.ioのブランドを担当されている沼田雄二朗さん、中橋竜矢さんに、同グループのグロース支援を担当する黒瀬がお話をうかがいました。

黒瀬:沼田さんとの出会いは10年以上前でしょうか。objcts.io以前に土屋鞄製造所にいらっしゃった時に、前職で開催したイベントにご登壇いただいたのが始まりでした。私たちがStoreHeroを設立する以前から、沼田さんはすでにShopifyを活用されており、起業の際にも相談に乗っていただきました。

今ではStoreHeroとしてお仕事をいただき、2022年3月から土屋鞄の海外販売、沼田さんが立ち上げられたobjcts.io、同年9月からはランドセルやジュエリーなど複数ブランドでグロースの支援を行っています。今日はよろしくお願いします。まずはご経歴とお仕事内容を簡単にご紹介いただけますか。

沼田:土屋鞄でEコマース領域に従事した後、スピンアウトする形で主にバックパックやスマホショルダーを開発するobjcts.ioを立ち上げておりましたが、昨年1月にブランドごと土屋鞄に戻ってきました。

現在はobjcts.io事業全体のほか、土屋鞄を含む複数ブランドのEコマース全般を管掌しています。

中橋:土屋鞄とobjcts.ioの事業責任者をしています。社内に商品開発、店舗統括、カスタマーサポートといった機能別の組織があるのですが、それらのマーケティング領域を、私たちのチームが横串を刺すような形で連携をとることもしています。

左:StoreHero CEO/黒瀬淳一 中央:KABAN事業推進本部 本部長 兼 objcts.io事業室 室長/中橋竜矢様 右:土屋鞄製造所 取締役/沼田雄二朗様

ブランドの世界観維持とグロースの両立は可能か

黒瀬:さっそくグロースのお話に入っていきたいと思います。グロース支援で求められることはすなわち売上アップです。一方で、ブランドは世界観を維持することが求められる。このふたつは、相反する部分があるのではないかと思います。どこまでガツガツ取り組むべきか、いまだに悩みながらご提案しています。売上を伸ばしながらブランドの世界観を維持する、両立のコツなどはあるのでしょうか。

沼田:いきなり難しい質問ですね…。ひとくちにブランドと言ってもさまざまで、機能的便益の比率が高いものもあれば、機能ではない情緒的価値が重きを占めるものもあります。

情緒的価値については、良し悪しを決める明確な基準を定めるのは難しく、人間が感情に基づいた判断を下さざるを得ないところがあります。よってさまざまなプロジェクトに意思決定者が参加し、その場で判断したほうが早いケースもあるように思います。

黒瀬:グロースにはある程度決まった型があり、それをもとにクライアントのビジネスにあわせて提案しますが、採用し、実際に行うかはクライアントの判断と実行力にかかっています。

沼田:私たちは製造小売業ですし、バリューチェーンが長いため、新しいことに取り組もうと決めた後、製造過程において実現が難しいことが判明する場合もあります。たとえばobjcts.ioのように比較的規模の小さいブランドは、担当者間のミーティングでの決定が全体の決定に等しく、決まったことはリソースが許す限り実行できますが、ある程度の規模のブランドではそうはいきません。時代に逆行するようですが、バリューチェーンの主要人物や、事業責任者が議論に参加し、その場で意思決定した上で前に進めることが重要だと考えています。

黒瀬:実際にグロースに向けて施策を実行する段階になってからも、ブランドの大小で違いはあるのでしょうか。

中橋:目標をシンプルにすることの重要性はどちらも変わりありませんが、大きいブランドはよりその傾向が強いと思います。さまざまな失敗も経験していますから、チェック項目が増え、万全を帰すことが大事になっている向きもあります。グロースやリソースの視点では必要性を問うべき項目もあるかもしれませんが、かといってやめてしまって良いのか否か、お客様目線で考えるところから始まるため、検討に時間がかかります。

沼田:業歴のあるブランドですと年間を通した季節ごとのキャンペーンなどはすでにやることが決まっていて、動いているプロジェクトも多数あります。余力でグロースのために新しいことに取り組もうにも、大幅な軌道修正は疲弊にもつながるため、力を割くバランスが難しいですね。

OMOでのブランド体験とグロースを両立するには

黒瀬:御社のブランドにおいては、オン・オフ複数のチャネルをまたいだブランド体験を作られていると思います。チャネルを横断したグロースを実現する上で、何がキーとなるでしょうか。

沼田:売上比率を見てもハイブリッドで、オンライン・オフラインのどちらも大切です。横断したブランド体験を作るという意味では、オン・オフどちらのチャネルにおいても現場感があるという点や、顧客の顔がしっかり見えているという点がキーになるような気がしています。中橋は実店舗もECの立ち上げも経験しているので、ハイブリッドですね。

中橋:たとえば、ECの売上を上げるためにEC限定製品を出そうといったアイデアは、お客様目線ではなく、ブランド目線ですよね。お客様目線で、それぞれのチャネルの良い体験を思い描くことが重要ではないかと思います。その上で、Instagramはこういう使い方をする、Googleはこんな心理で検索している、だからこんな提案が良いという順番で考えるべきではないでしょうか。

沼田:いちユーザーとして買い物をしていると、「この体験は良いな」と感じることがありますよね。感受性が高い人がたくさん買い物をすることが、良い体験を提供するための道のりを短くするのかもしれないですね。

黒瀬:Shopify POSを活用していますよね。オンラインとオフラインのデータ連携は便利になってきていますか?

沼田:連携という概念がもはやないというか、シームレスに同じデータです。オンとオフの購買行動のデータを突き合わせると、さまざまなアイデアが出てきそうではありますが当社の場合はまだ、そこまでやり切れていませんので、次の定例からStoreHeroさんにご協力願いたいと思います(笑)

情報をオープンに他と連動し、皆で最終目標の達成を目指す

黒瀬:グロースすなわち売上アップという目標に向かうと、あるチャネルではアシストを行い、他のチャネルで売上が上がるといったことも起きてきます。個別の担当者の評価が難しくなり、またモチベーションにも影響する場合もあるかと思います。

中橋:課題は残ってはいますが、改善傾向は出てきています。まずはメンバーに、他の担当者や他のチャネルと連動することが重要だと理解してもらうことが重要です。プロジェクト全体において、そのメンバーが担当するチャネルの役割がどのような位置付けだったかをきちんと説明すると、横との連携が自然に増えてくるようです。

最近では、他のチームの動きを把握していないと自分のパフォーマンスが最大限発揮できないという悩みを抱えるようになりました。裏返すと、他のチームとの連動が重要だとのマインドを持ってくれるようになったと言えるのではないでしょうか。

当社のブランドはバリューチェーンが長いため、仕組みを整えるだけでは十分ではなく、それぞれの担当者が他と連動してひとつの目標に向かうことが重要だと考えてくれるようになってはじめて、ようやくうまく動き出すのかなと感じています。

連動する上では、情報をサイロ化させずオープンにしていく必要がありますが、やり取りを他のメンバーに見られるのが恥ずかしいなど、心理的なハードルはあるようです。日々働きかけて改善するようにしています。

沼田:工房や実店舗のメンバーも参加するため、Messengerのように使い慣れたUIが良いかと思い、Meta社のWorkplaceというツールを採用しています。こちらもまだやりきれてはいないのですが、クローズドなチャットではなく、できるだけオープンチャネルでコミュニケーションしてもらい、誰もが必要な情報を得られる状態を目指しています。通知の頻度のコントロールは各自でできますからね。

中橋:アシストの役割を担う場合の評価については、事業部の売上という最終ゴールを設定した上で、定性的なものを含んだ目標を定めます。自分の領域の数字だけを伸ばそうとするメンバーはいなくなっていますし、そこに限定した評価は今では行っていません。

目標から逆算して動くことで働き方が変わる

黒瀬:StoreHeroがグロース支援に入らせていただいたことで、良い変化は起きているでしょうか。

中橋:以前は、打ち込む施策のバランスについて、データを見て判断してはいるものの、「ブランドとして既存のお客様に届けたい体験」のほうに軸足を置きすぎてしまった側面があったと思います。StoreHeroと一緒に取り組むことで、定量的に状況を把握したうえで、定性的なことを加味してやるべきことを意思決定できるようになりました。

データは取得しようと思えばいくらでも取得でき、すべてをチェックするのは難しいんですよね。データの見方の勘所を知るStoreHeroからアドバイスをもらい、「この数字を伸ばせば売上につながる」との視点でデータを見られるようになったのは、楽しい変化です。

沼田:以前からグロースに対する意識がなかったわけではなく、現場の担当者もそれぞれの役割に応じて頑張ってくれていました。StoreHeroに入ってもらったことで、目標の数字に向かってより一層逆算して動くことができるようになっています。また、さまざまなチームからメンバーを一斉に集めて、定めた最終目標にどうやったら皆でたどり着けるかのディスカッションができるようになりました。

働き方や意識が変わり、自分の領域を超えてグロースのために他部署や他のメンバーとコラボレーションするといったことが、より行いやすくなってきているのではと感じています。もちろん、まだまだ課題だらけの会社ではありますが。

黒瀬:他のメンバーの役割や動きを把握し、自身の領域の成果だけを追わず、売上アップという全体の最終ゴールに向かい、データから逆算して行動することが大事だと考えてくれるようになったのは大きいですね。

沼田:新卒も含め若いメンバーが多く、外部に委託するよりは自分たちで手を動かしたい文化があります。育成も含め、伴走していただけるパートナーを求めていました。海外では、各種様々な伴走型のエージェンシーがあり、ブランドはグロースのプロフェッショナルと一緒に動くのが当たり前なんですよね。Shopifyが登場し、高度なe-commerce活動が民主化されたことによりグロースやブランディングのようなその後のステップの重要性がより増したのだと思います。

ブランドの意志を反映したグロースへ

黒瀬:今後の展望やそれを踏まえたStoreHeroへのご要望があればお聞かせください。

中橋:長年、自分たちで企画し、自分たちで手を動かす方針でやってきました。それを前提に外部から概念的なアドバイスをいただくこともありましたが、打ち手につながることはそれほどありませんでした。StoreHeroに入ってもらったことで、選べる打ち手が劇的に増えたと感じています。今後は「なぜこの提案が出てきたのか」について、プロセスの部分まで自分たちのナレッジとして経験させていただくことで、より高度な議論が定例会議等でできるようになれば良いと思います。

沼田:以前黒瀬さんは、グロースを突き詰めていくと、広告運用など個別の領域だけでなく、バリューチェーン全体やより上流工程に遡るとおっしゃってましたよね。StoreHeroにさらに上流工程に入っていただくのも良いのですが、こちらからもっと情報を出していくことで、グロースの取り組み自体がより良くなっていくのではと考えています。ひとつの方法として、カウンターパートは事業責任者ではあるものの、それとは別に、現場で実際に手を動かす若いメンバーに、StoreHeroのアシスタント的役割をもっと担わせていただきたいです。

黒瀬:アシスタント的役割の方とは、定例会議とは別の機会を設けてお話をしていますが、何十人も参加する定例会議では言い出しにくい、ちょっとしたお困りごとをおうかがいできるため、こちらも手助けしやすくなっています。これまでのご提案のすべてが正しいとは思っておらず、さらにより良くしていきたい。御社から、「自分たちの良さはここだ」「ブランドとして今はこの商品を押し出したい」といった情報やご要望をいただければ、提案もさらにカスタマイズしていくことが可能だと思います。反論や厳しいフィードバックもお待ちしています。

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