Shopify Marketsは、Shopifyで越境ECを行う上で、中心となる機能群です。Shopify Marketsを利用することで、単一のShopifyストアで、複数の国や地域に対して、それぞれ最適化された販売設定を管理することができます。
この記事では、Shopify Marketsの機能説明、事例に加え、StoreHero流の越境ECの攻略法について解説します。越境ECに挑戦したいShopifyマーチャントの方は、ぜひ参考にしてください。
Contents
Shopify Markets
Shopify Marketsは、Shopifyで越境ECを行う際に中心となる機能群です。単一のShopifyストアで、複数の国や地域に対してそれぞれ最適化された販売設定を管理することができます。

Shopify Marketsは、越境ECの課題に対応するための多様な機能を提供します。
マーケット管理
Shopify Markets の中核となるのは、「マーケット」という単位で国や地域をグループ化し、管理する機能です。これにより、Shopifyマーチャントは、ターゲットとする市場ごとに異なる設定(価格、言語、ドメイン、公開商品など)を柔軟に適用できます。Shopify Marketsで作成できるマーケットの最大数は、契約しているShopifyのプランによって異なります。
参考

ローカライゼーション
海外の顧客に対して、自国で買い物をするような自然な体験を提供することは、CVR向上に不可欠です。
- 通貨: Shopify Paymentsを利用している場合、顧客の所在地に合わせて、130種類以上の国際通貨に商品価格を自動的に変換して表示できます。顧客は商品の閲覧からチェックアウト、返金まで、自国通貨で取引を行うことができます。為替レートは最新のものが自動適用され、端数処理も行われます。さらに、手動で為替レートを設定したり、マーケットごとに異なる商品価格(価格調整や固定価格)を設定することも可能です。
- 言語: 1つのストアで最大20言語に対応し、海外の顧客に母国語で情報を提供できます。「Translate & Adapt」など翻訳アプリとの連携により、オンラインストアのコンテンツ(商品ページ、ブログ記事、コレクションページなど)を多言語化できます。
- ドメイン: 複数の国でのSEOも考慮してマーケットごとに異なるドメインを登録できます。具体的には以下の3つの方法があります。
- サブディレクトリ: 主要ドメイン内に国や地域別のサブディレクトリを作成します(例: your-shop-name.com/ja-jp)。この方法はSEOの観点からもおすすめできます。
- サブドメイン: 主要ドメインにプレフィックスを追加したサブドメインを作成します(例: jp.your-shop-name.com)。
- 国・地域ごとの固有ドメイン (Country-Specific Domains – ccTLDs): 国や地域ごとに固有のドメインを取得します(例: your-shop-name.jp)。Shopify Markets は、訪問者のアクセス元地域に基づいて、最適なマーケットのサイトへ自動的にリダイレクトする機能も備えています。
- コンテンツ: マーケットごとに公開する商品を選択できます。例えば、国際配送が困難な商品や、特定の国では需要がない商品を、そのマーケットに対して非表示に設定することが可能です。

関税と輸入税
ShopifyのAdvancedプラン以上を利用している場合、チェックアウト時に海外取引でかかる関税や輸入税の見積もり額を計算し、顧客に提示・徴収することができます。これにより、顧客は購入前に総費用を把握でき、配達時の予期せぬ高額な追加料金の発生と受取拒否を防ぐことができます。この機能を利用するには、商品へのHSコードの適用などの設定が必要です。

ただし、関税の保証や税務の代行は行われません。運用責任はマーチャント自身が担う点が、後述するManaged MarketsやGlobal-eとの違いです。
Managed Markets
Managed Marketsは、Shopify Markets の機能を基盤としつつ、国際販売における運用面の複雑さを軽減することを目的とした上位プランです。単にツールを提供するだけでなく、事業者の代わりに法務・税務・物流面での責任の一部を担うことで、よりスムーズなグローバル展開を支援します。非常に便利ですが、現在、日本では使えません。
Global-e
Managed MarketsはGlobal-eの技術基盤を利用していますが、現在、日本で使えない中、Global-eと直接契約を結び、Shopifyストアと連携させる方法もあります。Global-eが直接提供するサービスは、広範囲なサポートを特徴としています。
- 広範なマーケット対応: 200以上の国と地域での販売をサポートします。
- 高度なローカライゼーション: 160種類もの通貨、150種類以上の現地決済方法に対応し、地域ごとの価格設定も可能です。
- 物流ネットワークとサポート: Global-eは広範な国際配送業者のネットワークを有しており、割引された配送料金を利用できます。
- 包括的なリスク管理: 高度な不正注文検知システムにより、国際取引における不正リスクを抑えます。また、Merchant of Recordとして、販売に伴う法務・税務リスクを引き受けてくれます。

Shopify Marketsの事例
Shopify Marketsを活用して成功した事例を調べてみました。どの事例もShopify Marketsを活用して、短期間に複数の国で事業を立ち上げることができた要因がまとめられています。
Shopify Markets活用事例
マーケット区分のベストプラクティス
Shopify Markets を効果的に活用するためには、販売対象国をどのように「マーケット」としてグループ化するかが重要です。このマーケット区分が、その後のローカライズの精度、運用効率に影響します。
戦略的なマーケットのグルーピング方法
最適なマーケットのグルーピング方法はビジネスの状況によって異なりますが、一般的なグルーピングの考え方を紹介します。
- 打ち手の類似度によるマーケット化: 最も基本的な考え方は、同じ打ち手(価格、プロモーション、商品展開など)が適用できる国や地域をマーケットとしてまとめることです。これにより、設定や管理の重複を避け、運用を簡素化できます。
- 重要市場の単一国マーケット化: 特に成長が期待される国や地域への打ち手(特定言語への完全対応、固有のキャンペーンなど)を展開したい場合は、単一国マーケットとして設定することが有効です。これにより、その市場にリソースを集中し、きめ細かい最適化を行うことが可能になります。
- 「その他地域」マーケット: 上記の戦略的市場以外で、本格的なローカライズを行う段階にない国々については、一旦、1つのマーケットにまとめて管理して運用を効率化します。このマーケットには、標準的な施策を提供しつつ、将来的に有望な国が見つかれば個別のマーケットに昇格させる、といった運用をします。
- 段階的な最適化: 最初から完璧なマーケット区分を目指すのではなく、まずは広めのグルーピングからスタートし、販売・顧客・トラフィックデータなどを分析しながら、徐々にマーケットを細分化していくアプローチも有効です 。
考慮すべき基準
マーケットをグループ化する際には、多角的に検討する必要がありますが、以下のような項目を考慮することになります。
- 地理的距離:物流コストや配送時間、文化的な類似性に影響します。
- 言語:主要な言語が共通する国々をグループ化することも多いです。言語は同じでも、表現や文化的な違いはあるため、コンテンツの微調整が必要になる可能性はあります。
- 通貨:同じ通貨を使用している国々(例:ユーロ圏)や、為替リスクの大きさが同様な国々をまとめることもあります(ボラティリティの大きさと通貨のトレンドなど)。
- 文化・価値観:消費者のライフスタイル、購買行動、好みなどが類似している国々は、マーケティングや商品展開の観点からグループ化しやすいです。
- 購買力: 所得、物価水準、オンラインショッピングの普及率などが近い国々は、価格や商品戦略を共通化しやすいです。
- マーケティングチャネル:利用の多いSNSや検索エンジンが同じ場合、集客活動の効率を高めることができます 。
StoreHero流越境EC攻略法
Shopify Marketsは越境ECの強力なツールですが、その効果を最大化するためには、工夫が必要です。ここでは、StoreHeroが実践する越境ECの攻略法を、解説します。
コミュニティの力を活用する
越境ECの立ち上げ期は、単に商品を並べるだけでは売上にはつながりにくいものです 。ブランドの知名度がない場合、信頼を得て購入につなげるために、コミュニティの力を活用することが有効です。
StoreHeroでは、販売を本格化する前から、Shopify CollabsやMetaのクリエイターマーケットプレイスなどを活用し、アンバサダーやインフルエンサーとのつながりを構築することを推奨しています。これらのプラットフォームを使えば、自社の商品と親和性の高いクリエイターを容易に探し出し、アフィリエイトプログラムなどに招待できます。
こちらはShopify Collabsのクリエイターのリクルーティング画面です。対象国のクリエイターをジャンルやオーディエンスサイズから選べます。

相性が良いクリエイターを見つけたら、投稿内容、フォロワー数などを確認して、アフィリエイトプログラムやwelcomeオファーを設定して招待することができます。支払いもShopify上で完結させることができます。

さらに、SNSでの盛り上がりだけでなく、ストア内にアンバサダーページを作成し、彼らのコンテンツを掲載し、ストア上でもコミュニティの盛り上がりを可視化します。これにより、信頼性を可視化し、購入率の向上につなげます。

CRM戦略をマーケットごとに最適化する
CRMの基本的な考え方として、購入商品や顧客属性に合わせてシナリオ配信を行うことが挙げられますが、越境ECの場合は、更にマーケットごとにシナリオを最適化することが必要です。
StoreHeroでは、マーケット別にどういったリピート購入の傾向があるか、どういった顧客層(年齢、性別など)がどういった商品を好むかなどを分析し、シナリオを設計します。
例えば、アメリカの女性とEUの男性には別の商品を提案する、といった具合に、マーケットに合わせた提案を行いリピート購入を促進します。

StoreHeroは、Klaviyoと連携し、シナリオに必要な商品カタログを自動的に作成することで、商品のレコメンドを効率化しています。

広告配信のマーケット別の最適化
広告も、越境ECにおいて新規顧客を獲得するための重要な手段です。StoreHeroでは、ShopifyとGoogle、Metaなどのプラットフォームを連携させ、顧客データや商品データを活用した精度の高い広告配信を重視しています。

CRMと同様に、年齢や性別などの属性に加えて、マーケット区分を掛け合わせた購買データにもとづいてグルーピングしたカタログや、顧客データを活用して、マーケット別に最適な広告配信ができるようにしています。
また、各マーケットでアンバサダーとの良好な関係が構築できている場合は、Metaのパートナーシップ広告を活用することも有効です 。これにより、アンバサダーのフォロワー周辺にもリーチを広げることができ、より自然な形で商品やブランドを訴求できます。

まとめ
Shopify Marketsの活用法について解説しました。Shopify Marketsは、Shopifyでの越境EC展開を強力にサポートする機能群です。Shopify Marketsを効果的に活用することで、海外の顧客に最適化されたショッピング体験を提供し、売上拡大につなげることができます。
さらに、Shopify Marketsの機能を最大限に活かすためには、Shopify Marketsの機能だけでなく、StoreHeroが提唱するような戦略的なアプローチも重要です。
この記事で紹介した、マーケットごとのコミュニティ、CRM、広告配信の最適化などのノウハウを活用して、Shopify Marketsのポテンシャルを最大限に活用してください。
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