「Shopifyで限定商品や抽選販売を始めたが、期待したほど売れない」。
Shopifyストアを運営する経営者や事業責任者の方で、このような悩みを抱えてはいないでしょうか。
限定販売や抽選販売は、単に商品を「珍しいもの」として売るだけでは成功しません。なぜ、あるブランドは発売のたびにSNSで「お祭り」のような盛り上がりを生み出し、広告費をかけずに注目を集められるのでしょうか? なぜ、「買えなかった」顧客がクレームではなく、次回の販売への「期待」を口にするのでしょうか?
その答えは、販売方法という「点」ではなく、事業成長の「線」として戦略的に設計された「希少性モデル」の運用にあります。
Contents
なぜ「希少性」がビジネス成長のエンジンになるのか?
Shopifyストアの成長戦略において、「希少性モデル」は強力な手法です。
この記事を読んでいる方は、すでに限定販売や抽選販売に取り組んでいるか、これから導入しようと考えているかもしれません。しかし、多くの場合、「売上は立ったが、次につながらない」という状況に陥りがちです。
この記事の目的は、Shopifyで希少性モデルを運用し、継続的な事業成長を実現するためのノウハウと事例を提供することです。
希少性を武器にするグロースモデルでは、製造量をあえて限定しながら、需要を喚起し、販売開始後に意図的に「売り切れる」状態を作り、常に販売量よりも需要を大きく維持し続けます。
この状態を生み出すことで、以下のような強力な成長サイクルが回り始めます。
- オーガニック認知の爆発的獲得
発売のたびにSNSなどでお祭り的な盛り上がりが生まれ、広告費をかけずに注目を集めることができます。購入できた顧客は、その嬉しさからSNSで投稿をし、それが新たな認知を呼びます。 - リピート購入への期待感醸成
今回買えなかった顧客の「次は必ず手に入れたい」という気持ちが、次回の販売への期待感を高め、ロイヤリティの高いリピート顧客を育成します。
本記事では、この希少性モデルをShopifyで実現するための「考え方の軸」 として、5つのステップに分解して具体的に解説します。
希少性モデルを成功に導く5ステップ
ここからは、希少性モデルというグロースモデルの考え方の軸を提供します。このフレームワーク を理解することで、後述する具体例の理解がスムーズになります。
希少性モデルの運用は、以下の5つのステップで構成されます。

ステップ1:販売機能の実装
最初のステップは、希少性のある商品を「どのように売るか」を決め、Shopifyに実装することです。
主な販売方法には「限定販売(先着順)」「抽選販売」「会員限定販売」などがあります。NIKEのSNKRSが先着順での限定販売や抽選販売などを定期的に行い盛り上がっていますが、Shopifyでも以下のような方法で同じ機能を実施することができます。

限定販売(先着順)
最もシンプルな方法ですが、人気商品の場合、販売開始と同時にアクセスが集中し、サーバーダウンや決済エラーのリスクが伴います。Shopifyは強力なインフラを持つため、滅多なことではサーバーダウンしませんが、外部決済サービスを使う場合、過受注が起きることがあるため、先着順での限定販売時は、外部決済サービスの利用は要注意です。
抽選販売
公平性を担保できる販売手法です。Shopifyでの実装方法は、大きく2つあります。
- Shopifyアプリの活用
- AppifyやRuffRuff予約販売など、抽選販売が実行できるアプリを導入します。設定が容易で、抽選から当選者への通知、購入導線の案内までを自動化・効率化できるメリットがあります。
- フォームによる抽選受付
- GoogleフォームやShopifyのフォーム機能で事前に抽選を受け付けます。その後、手動(またはCSV連携)で当選者を選定し、当選者にのみシークレットな購入導線をメールで案内する方法です。コストを抑えられますが、運用工数はかかります。
会員限定販売
特定の顧客セグメント(例:会員、ロイヤル顧客)のみに販売するクローズドな手法です。ロイヤルティの高い顧客へのリターンとして機能し、コミュニティの結束を高めます。Shopifyでの実装では、RuffRuff 注文制限やLocksmithのようなアプリが活用できます。これらのアプリは、特定の顧客タグや会員ランクに基づいて、商品ページへのアクセスや購入を制限できます。
どの販売方法を選ぶかは、ブランドのフェーズと顧客体験の設計によって決まります。「先着順」や「抽選」で多くの顧客の熱狂を演出したいのか、会員限定販売でロイヤル顧客のエンゲージメントを高めたいのか。まずは自社の状況に合った方法を選定することが重要です。
ステップ2:見込み客リスト作り
希少性モデルで最も重要なのは、「盛り上がり」や「お祭り感」を意図的に演出することです。
そのために不可欠なのが、ステップ1で決めた販売日時に向けて、「販売数以上に、欲しい顧客がいる状態」を作ること。つまり、販売前に「見込み客リスト」をどれだけ集められるかが勝負の分かれ目となります。
販売開始通知登録
販売開始前の商品ページに「Coming Soon」と表示し、「販売開始通知を受け取る」ボタンを設置します。ここでメールアドレスやLINE友ち登録を促します。
Back in stockは在庫が補充された際(または指定日時)に、登録者へ自動で販売開始通知メールを送信できる定番アプリですが、Back in stockを使って販売開始通知登録を実装することが多いです。Back in stockとCRM Plus on LINEを連携させて、LINE経由で通知を送ることも非常に効果的です。

ティザーページと広告
まだ商品ページがない(あるいは意図的に隠している)段階では、専用の「ティザーページ」を作成します。
このページで商品の魅力を断片的に見せつつ、メールアドレスやLINEの登録を集めます。このティザーページに対してSNS広告やリスティング広告を配信し、能動的に見込み客リストを集めに行きます。
販売開始までに集まるリスト数が販売予定数を大きく上回っていれば、次の「ナーチャリング」の効果が最大化されます。

ステップ3:ナーチャリング(期待感の醸成)
ステップ2で集めた「見込み客リスト」は、まだ「少し興味がある」程度の顧客群です。このリストに対し、販売開始までの間に期待感を極限まで高めるコミュニケーション(ナーチャリング)を行います。
このステップの巧拙が、販売開始時の爆発力を決定づけます。集めたメールやLINE、そしてSNSを活用して、顧客との接触頻度を増やし、期待を作り出します。
- 情報の段階的解禁: 商品の全貌を一度に見せず、少しずつ情報を解禁していきます。「デザイン画の公開」「素材のこだわり」など、小出しにすることで顧客の関心を引き付け続けます。
- カウントダウン: 「発売まであと7日」「明日21時、ついに販売開始」といったカウントダウンは、古典的ですが非常に強力です。
- 準備プロセスの公開: 製造背景、デザイナーの想い、工場の様子など、商品が生まれるまでの「準備プロセス」を見せることで、顧客はブランドのストーリーに共感し、ただの「モノ」としてではなく「作品」として商品を欲するようになります。
StoreHeroの支援事例では、ナーチャリングを行ってから販売した場合と、そうでない場合を比較して、事前獲得した顧客リスト経由の購入率(CVR)が2倍近く高くなったケースもあります。
ナーチャリングは「お買い得情報」を送ることではありません。「発売日に、何としてでも手に入れたい」という顧客の「感情」を設計するプロセスです。顧客に販売開始を楽しみにしてもらうことがゴールです。
ステップ4:販売開始
いよいよ販売開始です。ステップ3で高めた熱量を、ここで一気に爆発させます。
ステップ2で集めたリストに販売開始の通知や当選通知を行います。先着順の場合は、さらに「お祭り感」を増幅させるため、外部の力を活用することもあります。
- インフルエンサー / アンバサダー: 事前に商品をギフティングし、販売開始と同時に一斉に投稿してもらうよう依頼します。
- メディア: 親和性の高いウェブメディアを活用し、販売開始の話題を拡散してもらいます。
ここまでのステップが成功していれば、販売方法が「先着」であれ「抽選」であれ、希少な商品を手に入れられた顧客は強い喜びを感じます。
購入完了ページや、当選通知メールで、しっかり購入・当選できたことを祝福してシェアを促すことで、その嬉しさから、SNSで「買えた!」「当選した!」といった「自慢投稿」を自発的に行ってくれます。このUGCが、広告費ゼロで新たな顧客へのリーチを生み出し、次回の販売(ステップ2)における見込み客となっていきます。

ステップ5:定番商品販売とのシナジー
希少性モデルは、突発的な売上と話題を作ることに長けています。しかし、事業を継続的に成長させるには、売上のベースを作る「定番商品」の販売も不可欠です。希少性モデルの真価は、この「限定商品」と「定番商品」のシナジー(相乗効果)を生み出す点にあります。
ステップ2〜4で獲得した、熱量の高い「見込み客リスト」(購入できた顧客+買えなかった顧客)は、事業の最大の資産です。このリストに対して、CRMを使い、定番商品の販売を促します。
また、希少性モデルの販売時に獲得した見込み客リストや、SNSエンゲージメントのデータは、ShopifyやKlaviyoなどのMA/CRMアプリを通じて、Google広告やMeta広告のプラットフォームに連携し、オーディエンスとして活用し、広告の精度を高めます。
希少性モデルは「打ち上げ花火」で終わらせてはいけません。その熱量(リストとエンゲージメント)を、いかにして「定番商品」という継続的な売上基盤 につなげるか。このシナジー設計こそが、注力すべきポイントです。
まとめ
本記事では、Shopifyで「希少性モデル」を成功させるための体系的な5つのステップについて解説しました。要点は以下のとおりです。
- Shopifyでの希少性モデルの成功は、単なる機能実装ではなく、戦略的な「グロースモデル」の運用にかかっています。
- その運用は「1. 販売機能の実装」「2. 見込み客リスト作り」「3. ナーチャリング」「4. 販売開始」「5. 定番商品とのシナジー」という5ステップで構成されます。
- 特に「ナーチャリング」による期待感の醸成 と、獲得したリストを「定番商品」の販売につなげる「シナジー設計」 が、継続的な成長の鍵を握ります。
次の具体的な一歩を踏み出すために
「理論はわかったが、自社の場合はどこから手をつければ良いかわからない」
「このモデルを実践するためのリソースが足りない」
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