ヒーローインタビュー:「ものづくりの環境を良くしたい」— 理念を胸に中国へ。Rasical眞田代表が語る、Shopify黎明期からの試行錯誤と大ヒットの軌跡

「モノを通じて、ワクワクする体験を届ける」をミッションに、財布やカバンから高機能ジャケット、さらにはオフィスチェアまで、ユニークなプロダクトを展開するD2Cブランド「Rasical(ラシカル)」。

その背景には、代表・眞田様の「ものづくりの環境を良くしたい」という強い想いと、中国の工場に自ら飛び込み、言語を学びながらものづくりと向き合ってきた実行力があります。

眞田様がStoreHero代表の黒瀬と出会ったのは、まだ日本でShopifyの情報が少なかった2020年初。最初のプロダクトである財布が「思うように売れない」という悩みから始まり、マスクの爆発的ヒットと混乱、高機能ジャケット「フェアリーノヴァ」の成功、そして「絶対に売れない」と黒瀬が反対した「GrowSpica」の大ヒットまで、約5年間にわたり伴走してきました。

こだわり抜いたプロダクト開発の裏にある哲学と、数々の失敗を乗り越えてきたD2Cブランドのリアルな軌跡を、眞田様に伺いました。

【お話を伺った方】

Rasical Japan合同会社 代表 眞田到様

「ものづくりの環境を良くしたい」原体験から始まった、中国での製品開発

黒瀬: Rasical立ち上げの経緯は、実は僕も詳しく伺ったことがありませんでした。最初はどのような経緯だったのですか?

眞田様: どこから話しましょうか(笑)。Rasicalを立ち上げる前は車用品のパーツを作って販売する事業を行っていました。その事業を売却して次の事業のことを考えていた時に、中国の工場がメーカーからのコスト圧縮の要望を受けて、劣悪な環境で働かされていることを知り、「事業を通じて、ものづくりの環境を良くできないか」と考えるようになったのがきっかけです。

自分たちでプロダクトを作り、世の中に新しい価値を提案して、ものづくりの環境を良くしたい、その想いからRasicalを立ち上げました。

黒瀬: 最初のプロダクトは財布でしたよね。

眞田: はい、最初は財布でした。クラウドファンディングである程度は売れたのですが、「さて、次どうしよう?」と。そこからカバンを作ったりと、少しずつラインナップを広げていきました。

黒瀬: ものづくりは最初から中国で?

眞田: そうですね。ただ、当時は中国語が全くできなくて。最初は現地で手伝ってくれる人を介していたのですが、やり取りの中で色々な問題が出てきました。「これは自分で言語を身につけないと問題になる」と思い、現地の語学学校に通い始めたんです。学校に通いながら、自分で工場とやり取りするようになりました。

こだわりは「ワクワク感」。価格競争に陥らないための商品開発

黒瀬: Rasicalの商品は、どれも眞田さんの強いこだわりを感じます。商品開発で一貫している哲学はありますか?

眞田: 大企業のように、大量生産でコストを叩いて安く売る、という戦い方はしたくありませんでした。価格競争にならざるを得なくなってしまうので。

そうではなく、自分たちの理念に反しない「いいもの」を「いい値段」で作る。そして、お客様には価格ではなく「価値」で判断してもらいたい。その価値というのが、僕らがよく言う「ワクワク感」です。

黒瀬: 「ワクワク感」、よくおっしゃっていますよね。

眞田: 世の中に「これ欲しい!」と心から思えるモノって、意外と少なくないですか?僕は服とかにもあまり興味がなくて。だからこそ、エンターテイメント要素というか、「なんだか面白い」「他にはない」と思ってもらえるような、そういうワクワクするものを提供したいんです。

黒瀬: 確かに、Rasicalには「全部買う」という熱狂的なファンの方がいらっしゃいますよね。

眞田: ありがたいことに、いますね。そういう方々は、その「ワクワク感」に共感してくれているんだと思います。ただ、現代は面白いものを作っても、すぐに模倣されてしまうスピード感があります。今からもう一度Rasicalを作れと言われたら、かなり難しいでしょうね。

Shopify黎明期。「作ったけど、売れない」という悩みとStoreHeroとの出会い

黒瀬: Shopifyを選んだのは2017年か18年頃ですよね。日本ではかなり早い段階でしたが、なぜShopifyだったんですか?

眞田: 当時、中国にいたので海外の情報に触れる機会が多かったんです。ECプラットフォームを比較検討する中で、Shopifyにたどり着いたと記憶しています。日本のカートも見ましたが、拡張性が全然違いました。

アプリでこんなこともできる、あんなこともできる、と。もちろん、アプリごとにお金がかかることには驚きましたけど(笑)、やれることの多さに可能性を感じました。

黒瀬: そこで作ったストアの運用に悩んで、僕に連絡をくれたんですよね。

眞田: そうです(笑)。2019年末か2020年頭でしたね。黒瀬さんが当時発信されていたTwitterかブログを見て、「この人、めちゃくちゃ詳しそうだな」と。

黒瀬: 実は、僕が会社を作って間もない頃に、2時間で作った怪しげなサイトの問い合わせフォームから連絡をくれた、初めてのお客様が眞田さんだったんですよ(笑)。

眞田: そうでしたか(笑)。もう、本当に困っていたんです。Shopifyの使い方がわからないというよりは、ビジネスとして「作ったけど、売れない」状態。過去の事業ではAmazonがメインだったので、自社ECのマーケティング経験がなくて。

当時はShopifyの運用を支援している人もほとんどいなかったので、「この人しかいない」と思って相談しました。

「絶対無理」と言われた「椅子」への挑戦。ドブ板営業からの逆転劇

黒瀬: そこから色々ありましたね。最初は財布やカバンがなかなか売れず、その後、コロナということもあり、マスクがとんでもなく売れました。

眞田: マスクはすごかったですね。需要があるものは、爆発的に売れるんだと学びました。でも、今度は供給が不安定でお客様から「早く届けろ」と。あれは本当に大変でした。

黒瀬: その後、高機能ジャケットの「フェアリーノヴァ」がヒットしました。あれは販売前にアンケートを取った時の反響がすごかった。「絶対に欲しい」という熱狂的な声と、「作れるはずがない」という辛辣なコメントが入り混じって。

眞田: はい。僕自身がスキー場に行って必死に撮影した、素人感満載の写真でしたけど(笑)、逆にその熱意やリアルさが伝わったのかもしれません。綺麗なクリエイティブを作っても売れないものは売れないし、熱量があれば素人が撮影した写真でも売れる。あれで「自社サイトでもクラファン的な売り方ができる」という自信がつきました。

フェアリーノヴァはMakuakeで8000万円以上応援購入された

黒瀬: 翌年の「フェアリーノヴァ2」も販売前に商品についてのアンケート収集をしてお客様を巻き込み、今度は、Makuakeを使わず、Shopifyでクラウドファンディングを実施して大ヒットしました。クラウドファンディングは、「ワクワク感」という価値を提供するRasicalと非常に相性の良い販売方法だと感じます。

自社クラファンでも成功することができた

黒瀬: そして、満を持して高機能ワークチェアの「GrowSpica」です。僕は正直、財布やカバンやジャケットのブランドがいきなり椅子なんて「無理だ」と思いました。在庫リスクも大きいし、初速も良くなかったので、本気でヤバいと…。

高機能ワークチェアの「GrowSpica」

眞田: 僕は「いける」と思っていましたよ(笑)。

黒瀬: でも、実際、広告の費用対効果も良くなかった。だから「広告依存はやめて、泥臭くアフィリエイトのドブ板営業をやりまくりましょう」と提案しました。

提案した自分が言うのもおかしいですが、アフィリエイター開拓を、Rasicalほど愚直に実施するブランドは稀です。仕組みを作って効率化しながらも、泥臭い取り組みを愚直にできたことが結果につながったと思います。今でも、その時に関係を構築できた大勢のアフィリエイターさんたちに、売上を支えてもらっていますね。

眞田: あのアフィリエイト施策は大きかったですね。偶然にも有名インフルエンサーの方々にも取り上げられたりして、一気に火が付きました。

多くのアフィリエイターといっしょにブランドを盛り上げた

黒瀬: そこから認知が広がり、ヨドバシカメラさんなど量販店での取り扱いや、ドラマでの使用も決まっていきました。広告も、一度売れ始めると回るようになるんですよね。あれは本当にターニングポイントでした。

量販店へ展開

こだわり抜いた机開発と「価値を伝える挑戦」

黒瀬: 椅子が大ヒットし、その自然な流れとして「次は机だ」となりましたね。椅子からの展開でしたし、僕も次はうまくいく気がしていました。

眞田: はい。「椅子」で培ったノウハウを活かしつつ、さらにこだわったプロダクトを目指しました。天板の素材から足の品質までこだわり抜き、ユーザーが自由にアイテムを配置・カスタマイズできるRasical Deskの設計には、膨大な時間と思考を費やしました。

精密な設計が必要となる机の設計

黒瀬: Rasical Deskは、穴の位置一つずれるだけでも使えなくなる、非常に精密な設計が求められたと伺っています。

眞田: そうなんです。それだけこだわり抜くと、価格も高くなります。Amazonなどで、お客様が見ている格安商品の価格帯と、私たちが提供したいものの価格との間のギャップを埋めるためには、しっかり商品の魅力を伝える努力が必要です。

展示会などで実際に触れば「モノはすごく良い」と評価をいただけるのですが、販売当初は展示もしていなかったので、オンラインでその高品質さや精密な設計の価値を伝えきることに注力しました。椅子と同様に、アフィリエイトやインフルエンサー施策も地道に行いました。

Rasical Desk

黒瀬: 改善の積み重ねが実を結び、椅子と同様に徐々に売れるようになってきました。モノの価値と、それを伝える手段、そして価格のバランス。D2Cの永遠の課題ですね。

眞田: はい。私たちが届けたい「価値」と、お客様が許容できる「価格」。この両立の難しさを改めて痛感しましたし、一方で、愚直に取り組めば改善できるという自信も身につきました。

商品の魅力を伝えるためにコンテンツにはこだわっています。商品スペックは動画などを活用して分かりやすく説明し、活用シーンやレビュー・お客様インタビューも充実させています。

商品の魅力を伝えるためのコンテンツは充実している

幸い、Rasicalのお客様やアフィリエイターさんはレビューやインタビューに積極的に協力していただいています。

ユーザーインタビュー

今後の展望。コンテンツ発信でブランドの熱量を伝える

黒瀬: そうした試行錯誤を踏まえ、Rasicalの今後の展望を教えてください。

眞田: やはりコンテンツの発信が重要だと考えています。特に今は動画の時代。価値を理解して買っていただくためには、ブランドの思想や熱量を伝える動画での発信が不可欠です。

そこを強化しつつ、インフルエンサーさんやアフィリエイターさんとの取り組み、卸売も進めていく。やればまだまだ伸ばせると思っています。

黒瀬: そうですね。商品に魅力はあるので、コンテンツの発信を更に強化できれば、さらにファンがついてくると思います。僕らもその部分をしっかりサポートしていきます。本日はありがとうございました。

眞田: ありがとうございました。

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