Shopifyで加速するEC広告運用:データ連携とAI時代のクリエイティブ戦略 ——Yuwai株式会社代表田中広樹氏とStoreHero代表黒瀬の対談

はじめに
今回ご登場いただくのは、長年にわたりWeb広告運用の第一線で活躍してきた田中さん。NHKで放送エンジニアとして社会人キャリアをスタートし、その後デジタルマーケティング分野へ転身。アイレップ系ベンチャーやアナグラム株式会社での経験を経て、昨年独立。現在は、事業主のインハウス運用支援や広告代理店若手層へのトレーニングなど多岐にわたり活動されています。
本対談では、Shopifyを活用したEC広告運用の特徴や、Google・Meta(Facebook/Instagram)広告を中心とするプラットフォーム選び、さらにデータ活用やクリエイティブ戦略、将来のトレンドまで幅広く伺いました。

Yuwai株式会社 代表 田中広樹氏

田中氏のバックグラウンド

黒瀬: 初めて田中さんを知る読者の方もいらっしゃるかと思いますので、これまでのご経歴を簡単にお聞かせいただけますか?

田中:
僕は最初、NHKで放送エンジニアとしてキャリアをスタートしました。その後、2009年頃に広告代理店で広告運用を手掛け、2012年からアナグラムに1人目の社員として参加。11年半ほど在籍して昨年9月に独立しました。現在は、事業主がインハウスで広告を運用する際の支援や、広告代理店の若手へのトレーニングやサポートを行っています。

Shopifyならではの広告運用の特徴

黒瀬: Shopifyを活用するにあたって、広告運用面で特筆すべきメリットには、具体的にどのような点が挙げられるのでしょうか?

田中:
Shopifyは海外発のプラットフォームなので、GoogleマーチャントセンターやMetaのカタログ、YouTubeショッピング、Pinterestなど海外系広告プラットフォームとの連携が非常にスムーズです。ワンクリックで商品データや在庫が反映され、マーケター単独でもスピーディにセットアップできます。
現在の運用型広告システムでは、ファーストパーティーデータを機械学習にインプットすることが主流のトレンドとなっています。たとえば、Googleではカスタマーマッチ用の顧客オーディエンスリストを活用できますが、Shopifyを利用すればそのリストとの連携や更新が容易かつ自動的に行われます。こうした仕組みにより、最新の運用型広告の流れにスムーズに乗ることが可能となり、効率的な広告運用が実現できるのです。

黒瀬: 一方で、導入や運用の際に気をつけておくべきポイントには、どのような点があるのでしょうか?

田中:
Shopifyはカスタマイズ性が高く、さまざまなアプリを導入できますが、その結果「サイト上の価格や在庫情報」と「広告側に送られる情報」に食い違いが出るケースがあります。たとえば、割引・送料計算がアプリで独自管理されていると、広告側のフィード情報とサイト表示がズレ、マーチャントセンターで不承認になることもあります。とくに価格面での齟齬には要注意です。

広告プラットフォーム選びと運用上の考え方

黒瀬: EC広告の運用において、Google広告やMeta広告などのプラットフォームを選択する際には、扱う商材や月商規模によって良い使い分け方があるのでしょうか?

田中:
商材というよりはビジネスモデルで変わる印象です。SKU(商品数)が多い総合型ECの場合、Googleショッピング広告・P-maxやMetaのカタログ広告をフル活用する傾向があります。逆に単品通販のように商品理解が必要な場合は、Metaでビジュアル+テキストベースの訴求が有効なことが多いですね。衝動買いを狙うならMeta、指名買いならGoogle、という整理もしやすいです。

黒瀬: 他の媒体、例えばYahoo!やTikTokなどはどうでしょう。

田中:
Yahoo!も使われますが、優先度は低めですね。TikTokは計測精度が不安定なケースもあり、現時点ではMetaが安定しています。GoogleではP-Maxが主流化し、ショッピングフィードを軸に展開するケースが増えています。

黒瀬: クリエイティブの観点から見ると、GoogleとMetaではどのような違いや特徴が見られるのでしょうか?

田中
GoogleのP-Maxは検索・ショッピングを自動最適化する一方、MetaのAdvantage+ショッピングキャンペーンでは動画やコレクション、カタログなど、多くのクリエイティブを放り込んで機械学習に任せる運用が効果的です。クリエイティブでは、Metaは動画クリエイティブとInstagram面の相性が良く、Googleではショッピングが主力となるなど、それぞれ相性の良いフォーマットが明確に分かれている印象です。

データ連携のコツと注意点

黒瀬: データ連携が容易である一方、導入や運用面で注意すべき点や落とし穴はあるのでしょうか?

田中:
広告用の商品名はポリシーに準拠し、購入検討者が求める情報を前方に持ってくるなどの工夫が必要です。ウェブ上の商品名には「送料無料」など訴求文言を入れたくなりますが、広告審査ポリシーでNGなケースもあるため、フィードを運用して、Web表示用と広告用を分ける工夫が求められます。

黒瀬:顧客データは、実際にどのような形でビジネス戦略や施策に反映され、活用されているのでしょうか?

田中:
顧客リストをそのまま上げるのではなく、カテゴリごとにセグメントするなどクリーニングが重要です。幅広い商品ラインナップを扱う場合、全体顧客リストをそのまま投入すると機械学習が混乱しがちです。カテゴリー別に顧客属性を整理し、精度の高い類似オーディエンスを作るなどの工夫をすることが効果に直結します。

黒瀬: コンバージョンAPIや拡張コンバージョンについては、効果測定の面でどのようなメリットや課題があるのでしょうか?

田中:
これらを導入することでアトリビューション精度が上がり、1〜5%程度の追加コンバージョン補足が見込めます。学習データが増えるほど自動最適化の精度も上がります。ただし個人情報の取り扱いには細心の注意が必要で、プライバシーポリシー改訂や利用者同意など法的対策が必須です。

クリエイティブ戦略とランディングページ改善

黒瀬: カタログ広告以外のアプローチを考える際、クリエイティブ戦略上で特に注力すべきポイントはどのような点でしょうか?

田中
MetaではInstagram面における動画フォーマットが強いように思います。特別な演出よりも、スタッフがスマホで撮った簡易動画にテキストを載せたものが意外なほど成果を出すことも多いですね。要は、ユーザーが商品特徴を直感的に理解できる内容がカギ。オーガニック投稿で反応が良かったクリエイティブをそのまま広告転用する手もあります。

黒瀬: クリエイティブを展開するにあたり、LP(ランディングページ)との整合性は、具体的にどのような観点から確保されているのでしょうか?

田中
広告で訴求している商品がLPで売り切れ表示のまま放置されていると、ユーザー体験は悪化します。広告運用者は在庫や価格整合性をチェックし、改善提案を行うことも多いです。実際、広告とLPは相互に影響し合います。

一歩踏み込んだ運用:在庫、LTV、アップセル戦略

黒瀬: 在庫管理やLTV(顧客生涯価値)、そしてアップセルといった手法を踏まえたうえで、更にもう一段先を行く戦略的な取り組みには、どのようなものが考えられるのでしょうか?

田中
正直なところ、在庫やLTV向上は広告運用だけで解決できる話ではありません。オペレーションや商品戦略を改善することで、結果的に広告投資効率が上がります。在庫切れで主力商品が消えると、広告の効果も落ちますし、アップセル・クロスセルも重要です。広告は「流通促進の手段」であって、商品開発や在庫計画、サイト設計と連動することで最大化します。

将来展望:AI活用とクリエイティブの時代

黒瀬: 今後、業界全体においてはどのようなトレンドが見込まれ、将来の展望についてはどのようにお考えでしょうか?

田中
AIは今後ますます進化しますが、特にクリエイティブ制作面での生成AI活用が鍵になると思います。まだ生成AIのみで完全な広告バナーや動画を仕上げるのは難しいですが、頭の中のイメージをAIで「たたき台」としてアウトプットし、それをデザイナーとすり合わせるプロセスは大幅に効率化できます。結局、指示出し(プロンプト)や企画力は人間の言語化能力が問われる部分。AIと上手く共創できる運用者・マーケターが今後ますます価値を持つでしょう。

まとめ
Shopifyを起点とした運用は、データ連携と機械学習を最大限に活かせる一方、在庫や価格などの基本オペレーション、顧客データの精査といった基礎的取り組みが欠かせません。さらに、AIを活用したクリエイティブ改善やデータ活用ノウハウが、今後の広告運用の新たな武器となっていくはずです。
田中さんの経験から浮かび上がるのは、広告運用が単なる「出稿・最適化」ではなく、在庫、顧客、商品戦略を含めた総合的なビジネス成長策であるという視点。そして、その成長を加速させるのが、Shopifyの柔軟な連携とAI時代のクリエイティブ活用です。

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