ドローンでコマースはどう変わるのか?

5年ほど前から、Amazonがドローン配送を開始しようとしており、物流のラストワンマイル問題はドローンで解決される!
などの話がありましたが、今日も配達員の方からAmazonの商品を受け取りました。

さて、今回の記事の前半では、各社のドローン配送への取り組みを紹介し、後半ではそれによって何が変わるのか、特にコマース分野への影響を考察しました。

各社の取り組み

Amazon

2013年にアマゾンCEOのジェフ・ベゾスが、「ドローンによる30分以内の商品配送」という方針を初めて発表しました。

今、そのプロジェクトにはAmazon Prime Airという名前がつけられています。

Amazon Prime Air

そして、2020年9月初め、WingやFedEx、UPSに続いて、Amazonも米連邦航空局(FAA)から航空運送業者としてドローン配送開始の認可を得ました。

しかし、一方で、イギリスにあるPrime Airのドローン配送チームで100人以上の従業員を一時解雇し、事業規模を縮小させたようです。

別の少し前の話になりますが、2016年に空飛ぶ倉庫からドローン配送を行う、という特許をAmazonが申請していました。
壮大だなあと当時思った印象があります。

New Atlas

京東

2021年2月、京東のCEOは、四川省に185カ所、陝西省に100カ所のドローン専用エアポートを建設する予定で、それにより、中国国内のどの都市にも24時間以内に配達できる配達網が完成すると発表しました。

さらに、タクシーの配車センターのドローン版として、ドローン配機センターの建設を行い、ドローン配送のインフラを構築する考えを示しました。

また、2019年には、楽天と共同で日本での無人配達のサービス提供を行なう、という発表を行いました。

TechCrunch

Wing

Google親会社のAlphabetの子会社であるWingは、オーストラリアにおいて2017年からドローン配送のテストを開始しており、2021年8月に10万件の配送を達成し、世界最大の家庭用ドローン配送サービスとなりました。

当初は、各小売業者がWingの配送センターに商品を置き、それをドローンで配達する、というAmazonのような配送センター形式で運営を行なっていました。

しかし、2021年10月、新たにショッピングモールから直接家庭にドローンで配送するサービスを開始すると発表しました。

ショッピングモールの屋上には使われていないスペースが数多くあり、そこは実はドローンの発着場として最適であるとのことです。

Forbes

配達に関わる時間は、10~15分で、そのうちドローンの飛行にかかる時間は2~3分とのことです。

ちなみにWingのドローンは飛行機みたいな形をしています。

Forbes

ドローン配送の課題

上記のように、大手IT企業が続々とドローン事業に参入している中で、まだそれほど一般的になっていないのにはどのような課題があるのでしょうか?

法規制

ドローンに対しての各行政機関の法整備の先行きが不透明な状況において、ドローン配送の大規模な商用化は難しく、現在のところは関連当局の許認可取得後、限られた地域での試験運用を各社とも行なっている状況です。

自動運転の現状を彷彿とさせます。

障害物

都市部などでは、高層ビルや電線が立ち並び、ドローンがそれらを適切に避けて通る必要があります。

バッテリー

障害物が課題ならば、都市部以外の場所ではどうかというと、バッテリーが課題となってきます。

長距離を移動するためにはバッテリーの容量を多くする必要がありますが、その分コストや重量、充電のための時間が増加します。

鳥が自分のテリトリーを守るためにドローンを攻撃することはよくあり、ドローン配送の大きな課題となっています。

この問題が多発したため、Wingは一時的にドローン配送を中止しました。

SCREEN RANT

天気

雨や強風の時はドローンでの配達が難しくなります。

天気の良い時だけ使えば良いと思うかもしれませんが、天気によって配達人員の数を変更するというのはなかなか難しそうです。

盗難

盗難を考える人たちにとって、配達員が運んでいるものを盗むよりも、ドローンが運んでいるものを奪い取る方が簡単だと考えてもおかしくありません。

重量制限

ドローンでは重いものは運べません。

今まではとりあえずトラックで運ぶ、ということができていたのに、ドローンを使おうとすると、商品の重さによって配送手段を変えなければならず、既存のオペレーションを大きく修正しなければいけません。

メリット

さて、ドローン配送にはさまざまな課題がありますが、それでも各社が取り組みを続けるのには理由があります。

環境

ドローンはバッテリーで動くため、配送時に排気ガスを出しません。

人手、料金

アメリカでは特に顕著な問題ですが、年々人手不足と需要増加により配送料が高騰しています。

ドローンを活用できれば、人件費が大幅に削減できます。

時間

何だかんだ言っても配送時間は大切ですよね。

かつてAmazonで翌日配送を初めて使った時の衝撃は忘れられませんが、さらに配送時間が数十分になるとしたらそれはもう全く別の体験ですよね。

しかも交通渋滞も起こらないため、到着時間もかなり正確になると思われます。

アンケートの結果でも、ドローン配送で一番期待されていることは配達時間が短くなることのようです。

Clutch

体験が良くなるというだけではなく、実際に早く運ばないといけない物も多く存在します。

常温の食品や、医薬品などはドローンでの配送に最適です。

ワクチンや、緊急輸血のための血液をドローンで運ぶということは実際に行われています。

biopharma-reporter.com

コマースはどう変わっていくのか

ドローンによって物流が大きく変化した場合、コマースにももちろん大きな変化が訪れるはずです。

どんな新しい体験が待っているのか、想像を膨らませてみましょう。

コンビニや薬局で買っていたものをECで買うようになる

ECが普及してきた現在においても、コンビニや薬局はECでは満たせない需要を満たしています。

喉が渇いてコーヒーが飲みたい、トイレットペーパーを使い切ってしまった、そんな時にはECで明日届けてもらおう!とはなりません。(Ubre Eatsはそこの需要を取りに行ってますが)

しかし、ドローンで10分で届けてくれるとなると、外に出る準備をして買いに行って、とするよりもむしろ早く商品を手に入れられるようになります。

毎日の定期配送が現実的になる

荷物がいくら小さくても、人が運んでいる以上、配送費はある程度かかるので、極力まとめて買おう、送ろう、とせざるを得ないのが現状です。

しかし、配送費がほとんどかからない場合はどうでしょうか?

ドローンが毎朝7時ピッタリに熱々のコーヒーと作りたてのサンドイッチを運んでくれる、ということが現実的になります。

YELLROBOT

返品が前提のEC体験がやってくる

現在のECの大きな課題の一つに、試しづらいということがあります。

返品やお試し利用が無料、というECも中にはありますが、EC業者としても返品にかかる配送費は頭の痛い問題でしょうし、利用者としてもめんどくささはどうしてもあります。

しかし、ドローンが普及した場合、ECでの体験が返品を前提としたものになるかもしれません。

NIKEのECサイトで靴を買おうとしていて、何種類かの靴をお気に入りに追加すると、10分後にドローンがそれらの靴を家に運んできてくれて、全て試し履きをした後に、買わない靴はそのままドローンが持って帰る。

また、家でホームパーティーをする時に、高級レストランから綺麗にお皿に盛り付けられた食事が届き、食事後は洗わなくてもドローンがお皿を回収していってくれる。

想像するだけで素晴らしい体験ですね。

どこでも買え、どこでも届けられる

ドローンとGPSを使えば、どこにいても商品を受け取ることができるようになります。

夏にビーチに遊びに行った時、日焼け止めを忘れた。。。となっても大丈夫。
あなたのパラソルの場所までドローンが日焼け止めを届けてくれます。

Nautica.news

また、ドローンが商品を売り歩く(飛ぶ?)ということも起こるかもしれません。

雨が降ってきた時に傘を売り歩くドローンや、健康食品を訪問販売するドローンまで、いろんな使われ方がされるかもしれません。

感想

ドローン配送の意味としては、結局、物の移動のハードルを大幅に下げるということだと思います。

今までは人が運んでいたり、人が実店舗に出向いていたりしていましたが、逆に商品が家まで出迎えてくれるようになるという感じでしょうか。

このように、ECと実店舗の垣根が薄くなっていくと、実店舗と同じように、ECにおいても購買体験の設計がさらに大切になってくるでしょう。

また、今まではECで購入した場合、1日後、2日後の配達が当たり前であり、出荷作業に多少時間がかかっても、ユーザーに届く時間は大して変わらなかったかもしれませんし、ユーザー体験にも影響がなかったかもしれません。

しかし、ドローン配送が実現すると、かつてAmazonが翌日配送で当たり前という価値観を作り上げてしまったように、数十分で届くことが消費者の当たり前になってくることでしょう。

そうなると、それを実現できるような物流、倉庫オペレーションがユーザー体験という面でも重要になってくると思われます。

参考

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