神奈川県綾瀬市に実店舗を構え、カフェとアウトドア・ファッションのセレクトショップを展開する「NorMo Ayase Garage(ノルモ アヤセ ガレージ)」。コロナ禍のキャンプ・サウナブームに乗り順調に成長しましたが、ブームのピークアウトと共に売上低迷という大きな課題に直面します。
本記事では、NorMo Ayase Garageの豆村様、谷川様、市川様にインタビューを実施。ブームに依存した状態から脱却し、新たな顧客層へアプローチする独自の取り組みに迫ります。そこには、すべてのEC事業者が学ぶべき「変化に対応するチームビルディング」のヒントが隠されていました。
【お話を伺った方】
NorMo Ayase Garage 部長 豆村 誓一 様
NorMo Ayase Garage クリエイティブディレクター&バイヤー 谷川 智則様
NorMo Ayase Garage EC&SNS担当 市川 木乃実 様

Contents
原点はカフェとレンタル。ブームを追い風に「物販」、そして「サウナ」へ
黒瀬: 本日はありがとうございます。まず、NorMo Ayase Garage様の事業がどのように始まったのか、その経緯からお伺いできますか?
豆村様: よろしくお願いします。立ち上げ当初は、ハンバーガーカフェ、それにキャンプギアやカスタムカーのレンタルを事業の柱としてスタートしました。経営方針としても、まずはリアルな体験をコアに、という形でした。ただ、当然シミュレーションはしたのですが、事業開始から3ヶ月ほどで、カフェとレンタル事業だけで収益を賄うのはなかなか難しいという現実に直面しました。
黒瀬: 飲食やレンタルから、どのようにして現在のセレクトショップ形態になったのでしょうか?
豆村様: はい。その収益化が難しいという流れの中で、打開策として物販を始めました。ちょうど社内的にアウトドアへの関心が高まっていて、世間でもキャンプブームが来ているところでしたので、メーカーさんに協力してもらい、POPUPでキャンプギアの販売を始めたのが経緯です。
黒瀬: ECサイトはその時からでしょうか?
豆村様: はい。物販を始めるにあたり、当初は「レンタル+EC販売」ができるような自社サイトを立ち上げました。それがECの始まりです。
黒瀬: 当時の売れ筋はやはりキャンプギアが中心だったのですか?
豆村様: そうですね。その後、ECプラットフォームをShopifyに移行するのですが、その頃にちょうど「サウナブーム」が来ました。私たちも敷地内でアウトドアサウナのイベントをやったりしていて、その流れで「サウナボーイ」というブランドの取り扱いを始めたんです。これがShopify移行後、最初にヒットした商品です。1年半ぐらいは、このブランドが売上を牽引してくれましたね。

ブーム終焉という「壁」。ファッションに舵を切るも、既存ファンに響かないジレンマ
黒瀬: キャンプ、サウナと、時流を捉えて成長されてきたんですね。
豆村様: はい。ただ、コロナが明けてキャンプブームがピークアウトし、市場としても定着はしたものの、ブームが一時ほどではなくなってきました。会社としても、ピークアウトしたという認識でした。
黒瀬: 事業の柱だったキャンプブームが落ち着いてしまった、と。
豆村様: ええ。そこで会社の方針として、物販の軸足をキャンプギアから「ファッション性のあるもの」へ本格的に舵を切ることになりました。もともとギアから売上を立てていましたが、アウトドア基軸でありながらも、撥水などの高機能性だけではない、カジュアルなものや古着まで扱うという方向性です。
黒瀬: 大きな方向転換ですね。スムーズに進みましたか?
豆村様: それが、非常に難しい課題に直面しました。私たちが「ファッション」に舵を切ると言っても、既存のお客様がついてきづらかった。
NorMo Ayase GarageのInstagramフォロワー(現在約1.4万人)の大多数は、私たちがアウトドアやサウナといった「カルチャー」を発信していた時期にフォローしてくれた方々なんです。その方々に対して、私たちが一方的に、しかも価格帯もこれまでと違うファッションアイテムを発信しても、なかなか受け入れてもらえない。
黒瀬: なるほど。既存のファン層と、新しく打ち出したい方向性との間に「ギャップ」が生まれてしまったんですね。
豆村様: まさにその通りです。ファッションに興味がある新しいお客様は、本当にゼロから作っていかないといけない。このギャップをどう埋めていくかが、最大の課題でした。
V字回復の鍵は「人」。専門スタッフ加入が実現した“伝わる”コンテンツ強化
黒瀬: その大きな課題を、どのように乗り越えようとされたのでしょうか。
豆村様: この1〜2年で、最大の変化は「人」ですね。僕が(一度離れて)ファッション担当として戻ってきて1年ほど経った頃、EC担当として市川が入ってきてくれたんです。
黒瀬: チーム体制の変化が大きかったのですね。
豆村様: 圧倒的に大きいです。それ以前は、EC担当が他の業務と兼業していることも多く、やりたいことがあっても手が回らず、やり切れていないことが山積みでした。市川が入ってきて、これまでできていなかったことを一つひとつ積み重ねていってくれた。これがまず大きな一歩でした。
黒瀬: この1〜2年で、コーディネートのコンテンツやスタッフスナップが格段に増えたと感じています。谷川さんもモデルとして登場されていますよね。私自身もNorMoでよく買い物をしますが、自分みたいにファッションに詳しくない人からすると、「どう着ればいいか」が分からないと不安ですが、スタッフスナップのおかげで「こんな感じになれるんだ」というイメージを持てて、安心して購入できています。
商品の「伝え方」で工夫されている点はありますか?機能性とファッション性の両立は、伝えるのが難しい側面もあるかと思います。
谷川様: おっしゃる通りです。そこは商品によってバランスを変えています。例えば「and wander」さんのように、登山スペックの機能性を持ちつつモードな雰囲気を併せ持つブランドの場合、ファッション優先として取り上げたり。
また、バイヤーとして「この商品のどこが一番良いと思っているか」を言語化し、お客様に伝えることが重要だと考えています。最近始めたバイヤーレビューの取り組みも、自分たちが「なぜこれを良いと思って仕入れたか」を再認識する良い機会になっていますね。

「実店舗」がある強み。ECとリアルが連携し、ブランド開拓を加速
黒瀬: チームの変化以外に、売上が上向いてきた要因はありますか?
豆村様: ファッションに舵を切るために開拓してきた「新しいブランド」が、ようやく店頭に入り始めたことも大きいです。
ファッションブランド、特に高価格帯のブランドは、導入までにすごく時間がかかるんです。まず提案に行き、承認が下りて、展示会で発注して、納品されるまで…早くても半年、長ければ1年近くかかります。
黒瀬: そんなにかかるんですね。
豆村様: ええ。なので、イメージではもっと早く変革したくても、物理的に商品が揃わない。この1年で、まさにその仕込んできたブランドが入り出している最中なんです。
黒瀬: ブランド開拓において、NorMo Ayase Garageの強みはありますか?
豆村様: 「リアル店舗」があることですね。高価格帯のブランドは、「ECサイトのみでの販売は不可」とか「リアル店舗がないと卸せない」といった規制(販路制限)が結構あるんです。私たちは綾瀬に実店舗を持っているので、その条件をクリアしやすい。これはECを運営する上で大きな強みになっています。
黒瀬: ECと実店舗の連携(O2O)についてはいかがですか?例えば、ECの会員ランク特典で「店舗のハンバーガー無料券」など、NorMo Ayase Garageさんらしいインセンティブもできそうですよね。
豆村様: ああ、それは面白いですね。ハンバーガーがもらえるのは嬉しい(笑)。確かに、ECで購入されたお客様が、特典を受け取りに店舗に来てくださる、という流れは作れるかもしれません。店舗も持っている我々ならではの強みとして、要検討ですね。
助言を「実行できるチーム」へ。StoreHeroとの連携が生んだ相乗効果
黒瀬: 私たちStoreHeroも、もう2年以上ご一緒させていただいていますね。この1年のチームの変化は、私たちとの取り組みにおいて何か影響はありましたか?
豆村様: まさにそこが大きいです。先ほど「人的な変化」が大きかったと話しましたが、StoreHeroさんのようなパートナーからの助言を、ようやく「実行できるチーム」になったことが、非常に大きいと感じています。
黒瀬: 以前は、体制的に難しかったと。
豆村様: 正直なところ、そうですね。StoreHeroさんからは以前から多くの助言をいただいていたのですが、以前の体制ではそれを実行しきれていませんでした。
この1年で市川という「実践できる人」がチームに加わったことで、いただいた助言をようやく自分たちでも活かせる体制が整った、と実感しています。
黒瀬: 施策数が増えるにつれて、着実に売上も伸びてきているのを私達も感じています。
市川様: NorMoでは毎週金曜に新作を販売していますが、火曜に事前告知をしてお客様に販売を楽しみにして頂くようにしています。こういった運用も、継続的に行えるようになり、お客様の中でお買い物の習慣ができているように感じています。StoreHeroさんには、いつもチャレンジングな「実装」にもかなり協力していただき、本当に助かっています。
豆村様: 人的な体制の変化、仕込んできた商品の変化、そしてパートナーからの助言。これらが良いタイミングで重なって、ようやく「助言を活かせる」ようになり、現在の回復につながっていると思います。

目指すは「カルチャーの交差点」。ブームに依存しない、独自のコミュニティを育てるために
黒瀬: 最後に、今後の展望についてお聞かせください。
豆村様: 正直、今はまだ「過渡期」だと認識しています。更に成長させるためにどうしていくか、日々課題と向き合っている最中です。
今のお客様は、お買い物で「失敗したくない」という意識が非常に強いと感じます。値段を比べるのはもちろん、信頼する誰かのお墨付きがないと買いづらい。そんな時代の中で、私たちのお店が選ばれるためには、単に商品を並べるだけではなく、何かしらの「カルチャー」に紐づいたユニークさ、品揃えの「説得力」が必要不可欠です。
黒瀬: 説得力、ですね。
豆村様: はい。例えば、うちのスタッフには自転車など本格的な趣味を持つ者も多いんです。そうしたリアルな趣味やカルチャーを起点に、今のファッションの品揃えと結びつけ、説得力のある提案をしていく。最近始めた古着(ヴィンテージ)の取り扱いも、そうしたカルチャー軸の一環です。
黒瀬: スタッフの「好き」がビジネスに繋がっていくイメージですね。
豆村様: アウトドアという軸は残しつつも、そこに新たなカルチャーを掛け合わせることで、NorMo Ayase Garage独自のコミュニティを育てていきたい。ブームに依存するのではなく、私たち自身がお客様と新しいカルチャーを作っていく。それが私たちのこれからの挑戦です。
黒瀬: ブームに依存しない、NorMo Ayase Garage独自のカルチャーとコミュニティを作っていく挑戦、非常に楽しみです。本日は貴重なお話をありがとうございました。
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