ヒーローインタビュー: 株式会社シンシア様「ひらめき」から生まれた大ヒット商品と、売上減少からのV字回復。カラコンEC『Mew contact』が貫く“顧客インサイト”の経営

国内有数のカラーコンタクトレンズ(以下、カラコン)ECサイトとして、多くのユーザーに支持される『Mew contact(ミューコンタクト)』。その華々しい成功の裏には、サイトリニューアルの失敗による「売上減少」という、知られざる苦悩があった。原因は、顧客の顔が見えなくなったこと。

本記事では、同事業を運営する株式会社シンシアの篠池様と福田様にインタビューを実施。売上減少からV字回復を成し遂げた独自の哲学と取り組みに深く迫る。そこには、すべてのEC事業者が学ぶべき「顧客との向き合い方」のヒントが隠されていた。

【お話を伺った方】

株式会社シンシア カラコン事業部 部長 篠池 真由香 様(写真右)
株式会社シンシア カラコン事業部 福田 奈緒子 様(写真左)

インタビュアー:株式会社StoreHero 代表取締役CEO黒瀬

常識を疑うことから始まった、「安心安全」への挑戦

黒瀬: 本日はありがとうございます。まずは改めて、『Mew contact』がどのようにして生まれたのか、その原点について教えていただけますか?

篠池様: もともとは、私がフリュー株式会社の新規事業として立ち上げました。当時、女の子たちがスマホで何を買っているか調査したところ「カラコン」が多く挙がったのですが、市場を調べると粗悪な輸入品による健康被害が問題になっていました。そこで、国が承認したレンズだけを扱う、「安心安全に可愛くなれるカラコン通販サイト」を作ろうと思ったのが始まりです。

「盛り」から「バレない」へ。たった一つの“ひらめき”が市場を変えた

黒瀬: 『Mew contact』といえば、大ヒット商品『LuMia(ルミア)』の存在が大きいですね。

篠池様: ありがとうございます。当時のカラコンは、いかに「盛る」かという足し算の発想ばかりでした。でも、「本当にみんな盛りたいのかな?」と疑問に思ったんです。「自分では変化がわかるけれど、人からは裸眼に見える」——そんな新しいジャンルがあったらいいな、という本当に“ひらめき”から生まれた商品です。

黒瀬: その商品の魅力を伝える上で、どのような工夫をされましたか?

福田様: やはりキャッチコピーやメイン画像ですね。例えば「バレない」という価値をどう表現するか。商品のコンセプトという「軸」を制作会社さんやデザイナーさんにしっかりお伝えして、クリエイティブに落とし込んでもらう形です。ただ、自分たちの感覚だけで作ると失敗するので、常にお客様へのヒアリングを重ねて、何が響くのかを探りながら作っています。

顧客インサイトを起点とした3段階CRM戦略

黒瀬: 事業を成長させる上で、CRM(顧客関係管理)にも非常に力を入れてこられたと伺いました。

篠池様: はい。特に初期に効果的だったのは、業界で一番最初に始めた「カラコンレビューサイト」ですね。当時はInstagramも黎明期で、メーカーさんの加工写真は参考にならないというお客様のインサイトがありました。そこでスタッフが実際に装着した“忖度なし”のレビューをコンテンツにしたところ、これが事業拡大の起爆剤になりました。

黒瀬: 顧客との長期的な関係づくりにおいては、どのような考え方をされているのでしょうか?

篠池様: 私たちはお客様との関係構築を3段階で考えています。新規、2回目購入(F2転換)、3回目以降(F3〜)です。特にF2転換の壁が一番高い。 ここを越えてもらうために、お客様がどんな導線を辿り、どんな心理状態なのか、その“買うときのインサイト”を細かく想像します。「誰のための施策か」を明確にし、LINEやメールで最適なタイミングでアプローチを変えることが重要です。

売上減少という悪夢。サイトが「ツール」と化した日

黒瀬: 事業は順調だった一方で、Shopifyへの移行で大きな壁にぶつかったそうですね。

篠池様: ええ。経営判断で進められた1回目のリニューアルが、現場やお客様のインサイトが反映されていない単なる「載せ替え」になってしまい、売上が落ち込みました。 サイトが血の通わない「ツール」になってしまったんです。本当に危機的な状況でした。

黒瀬: 具体的には、検索機能などに大きな課題があったそうですね。

福田様: はい。カラコンユーザーは、レンズ直径などのスペックで選びたいリテラシーの高い方と、「ふんわり系」のように雰囲気で探したい初心者の方が混在しています。以前のサイトは、そのどちらのニーズにも応えられていませんでした。お客様が「選ぶのが難しい」と感じてしまっている状態でした。

「まるで美容部員さん」。インサイトから生まれた理想の検索体験

黒瀬: そこから弊社(StoreHero)とV字回復を目指すリニューアルが始まりました。理想の検索体験とは、どのようなものだとお考えでしたか?

福田様: お客様へのインタビューで多かったのが「本当はデパートの美容部員さんに相談するみたいにしながら決めたい」という声でした。これこそが私たちの目指すべき姿だと。そこで、スペックで詳細に絞り込める機能と、印象や雰囲気で探せる機能を両立させ、誰もが直感的に使えるUI/UXを追求しました。チャットで気軽に相談できるようにしたのも、その一環です。

サイト改善が広告効率を向上させた

黒瀬: サイト内検索の改善は、広告運用にもポジティブな影響がありました。

篠池様: はい、これは大きな発見でした。カラコンは医療機器という側面もあり広告表現に制約が多いのですが、それ以前に、サイト構造が複雑だと広告のクローラーが各商品の情報を正しく認識できず、適切なユーザーに広告を届けられなかったんです。

黒瀬: リニューアルでサイト構造が整理されたことで、クローラーがスムーズに回遊できるようになり、各商品がどんな特徴を持っているのかを正確に理解してくれるようになりました。 その結果、広告配信の精度と効率が劇的に改善し、新規顧客の獲得に大きく貢献してくれましたね。

パートナーは「魔法使い」。最強の“買いやすさ”と“やらない選択”

黒瀬: 検索以外にも、商品ページの「買いやすさ」も徹底的に追求しましたね。

篠池様: はい。左右で度数が違う場合の購入フローや、ブランド内のカラーバリエーション表示など、お客様がストレスなく購入できる細かな工夫を数多く実装していただきました。NPS(顧客推奨度)アンケートでも「サイトが買いやすい」というご意見が本当に多いです。

黒瀬: パートナーとして、私たちの仕事ぶりはいかがでしたか?

福田様: StoreHeroさんは、私たちが「こうしたい」と伝えても、「事業の将来を考えると、そのやり方は後で困りますよ」と“やらないほうが良いこと”も正直に言ってくれる存在です。専門知識のない私たちにとって、本当に頼りになる。社内では、何でも解決してくれる「ウィザード(魔法使い)」と呼ばれていますよ(笑)。

ECサイトは“ツール”ではない。顧客に寄り添う“サービス”であり続けるために

黒瀬: 本日は貴重なお話をありがとうございました。お話を伺い、『Mew contact』様の強さは、どんな状況でも常にお客様の顔を想像し、「ECサイトはサービスである」という哲学を貫いてこられた点にあると感じました。

篠池様: ありがとうございます。結局は、サイトの向こう側にいるお客様一人ひとりを、どれだけ自分事として考えられるかに尽きるのだと思います。今後は上位ランクの会員様限定イベントを開催するなど、より深い関係性を築けるCRMにも挑戦していきたいですね。

黒瀬: その姿勢が、V字回復の原動力になったのですね。

篠池様: はい。2025年4月から経営が株式会社シンシアとなり、私たちにとっても新たなスタートを切っています。運営会社は変わっても、顧客ファーストの方針は変わらずに、お客様との新しい接点作りにも挑戦していきたいです。

黒瀬: 今後の挑戦も楽しみにしています。本日はありがとうございました!

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