今回は、Shopifyストアを運営し、ブログやYouTube、Instagramなどのメディア運営にも力を入れている経営者や事業責任者の方向けの記事です。
「メディアからのトラフィックは多いのに、なぜかShopifyで商品が売れない」
もし、今このような課題を抱えているなら、この記事はお役に立てると思います。
オウンドメディアやSNSアカウントを苦労して育て、毎日多くのアクセスや「いいね」を集める。しかし、その熱量がShopifyストアの「売上」という具体的な成果に結びつかない。これは、メディア活用に取り組む多くの事業者が直面する「見えない壁」です。
トラフィックはあるのに、売れない。この最ももどかしい状況は、単なる導線の問題ではなく、メディアとコマース(EC)が、顧客体験の中で「分断」されてしまっていることに根本的な原因があります。
この記事では、その壁を乗り越えるための具体的な戦略を解説します。
なぜメディア経由で「売れない」のか?
多くの事業者が陥る間違いは、メディアを「集客装置」、Shopifyストアを「販売場所」と、別々の機能として捉えてしまうことです。
- メディアの読者・視聴者は、有益な情報やエンターテイメントを求めています。
 - 購入するには、商品を購入する理由が必要です。
 
この2点を抑える事が大事です。メディアで情報に満足した読者が、突然「さあ、買ってください」と商品のリンクを提示されても、そこで購入のモチベーションが生まれることは稀です。
では、どうすればよいのでしょうか?
答えは、メディア運営とECサイト運営を分断せず、「商品購入をメディア体験に組み入れる」という「メディアコマースモデル」の考え方にあります。
メディアコマースモデルが継続成長を生み出す理由
メディアコマースモデルでは、ECサイト以外にYouTube、オウンドメディア、SNS、クラウドファンディングなど、継続的に人を引き付け続ける「メディアの運営力」が中核となります。
このモデルが、なぜ継続的な成長に繋がるのか。その理由は、大きく2つの「資産」が蓄積されるからです。
成長ポイント1:コンテンツが「資産」となり、集客コストが低減する
一度制作したブログ記事やYouTube動画は、インターネット上に残り続けます。質の高いコンテンツが蓄積されていくと、それらが検索やSNS経由での自然流入を生み出し続けます。
これは、時間が経つにつれて「集客コストが低減する」ことを意味します。新規顧客獲得のために常に高額な広告費を払い続けるモデルとは異なり、メディアコマースモデルは、作れば作るほど将来の集客が楽になる、まさに「資産運用」型の戦略です。
成長ポイント2:見込み客リストが「資産」となり、収益効率が向上する
メディアを通じて集まるのは、単なるトラフィックではありません。あなたの発信する情報や世界観に共感する「ファン」や「オーディエンス」です。
メディアを通じて、これらの見込み客のリスト(メルマガ登録やLINE登録)やオーディエンスデータが集まります。このリストは、あなたのビジネスにとって最も貴重な資産の一つとなります。集まったリストに対して、CRM施策や、高効率なリターゲティング広告を配信することで、効率的に商品購入に導くことができます。
Shopifyでメディアコマースを成功させる5ステップ
メディアコマースの「グロースモデルの運用方法」を、Shopifyで実現するための5つの具体的なステップに分解して、事例と共に解説します。
ステップ1:メディアの文脈に合った商品を作る
最も重要な大前提です。メディアコマースにおいて、商品の販売は、メディアが提供する体験の一部として提供されるべきです。
メディアが持つ「文脈」や「世界観」と、販売する商品が完璧に一致している必要があります。もし、メディアが「丁寧な暮らし」を発信しているのに、いきなり「ジャンクフード」を勧めたら、読者は 即座に離脱するでしょう。
事例:Glossier
米国の人気コスメブランドGlossierは、元々「Into The Gloss」という美容ブログから始まりました。このブログは、有名人や一般の読者が、自身のリアルな美容の悩みや愛用製品のレビューを赤裸々に語り合う「場(コミュニティ)」として人気を博しました。

Glossierは、ブログ内で「あなたの理想の洗顔料は?」といった問いかけを投げかけ、読者コミュニティから生々しいインサイト(意見)を集めました。そして、そのインサイトを元に製品開発を行い、ヒット商品を生み出しました。
この時、読者にとって商品は「広告されたモノ」ではなく、「自分たちの声が反映された、コミュニティ活動の成果物」として映ります。これこそが、メディアの文脈と商品が一体化した好例です。
ステップ2:メディアから商品への「シームレスな導線」を実装する
メディアの文脈に合った商品ができたら、次はその商品を「見つけてもらう」導線です。メディアの読者が熱狂しているその瞬間に、いかにストレスなく購入ページに誘導できるかが鍵となります。
特に、Instagram、Tiktok、YoutubeといったSNSのショッピング枠との連動は、今や必須と言えます。これらは、メディア体験からショッピング体験への最もシームレスな導線となります。
この導線設計はShopifyの得意分野です。通常であれば開発が必要になるような各SNSとの在庫・商品データの連携(フィードデータ連携)が、Shopifyの場合は無料アプリを使うことで、開発なしに実現できます。
- Instagramショッピング (Facebook & Instagram)
 - TikTokショップ (TikTok)
 - YouTubeショッピング (Google & YouTube)
 

これらを設定するだけで、例えばInstagramの投稿写真に商品をタグ付けしたり、YouTube動画のすぐ下に紹介商品を並べたりすることが可能になります。
ステップ3:「メディア体験」として見込み客をリスト化する
ステップ2で即時購入に至らなくても、問題ありません。メディアコマースの強みは見込み客リストの蓄積のしやすさにもあります。
ただし、ここでも「メディア体験の一部」としてリスト化(メルマガ登録、LINE登録)を行う意識が重要です。いきなり「メルマガ登録でお得な情報を!」と提示するだけでは、読者は動きません。
リスト化の具体例
- 新商品のティザー: メディア内の企画で生まれた新商品の開発秘話を連載。販売前にティザーページ(予告ページ)を用意し、「先行販売のお知らせを受け取る」ためにメルマガやLINEに登録してもらう。
 - 参加型企画: メディアの企画として「抽選・コンテスト」などを開催。その「応募フォーム」として、メルマガやLINE登録を経由させる。
 - 限定コンテンツ: 「この記事の続きは、メルマガ限定でお届けします」といった形で、メディアの文脈を活かした限定コンテンツをフックにする。
 
これらの施策も、Shopifyアプリを使えばすぐに実現できます。
- 単なる抽選やコンテスト: Shopify Formsなどのフォームアプリで実装可能です。
 - 抽選販売まで行いたい: 「Appify」や「RuffRuff予約販売」といったアプリが役立ちます。
 - メルマガ限定コンテンツ: liquidでの実装や「Locksmith」などのアクセス制限アプリで特定の顧客だけが見られるページを簡単に作成できます。
 
事例インタビュー記事でも紹介したStoreHeroの支援先のRasicalでは、毎月抽選企画を実施しています(Rasicalのヒーローインタビュー)。
ステップ4:購買体験を「次のメディア体験」の一部にする
商品が売れたら、それで終わりではありません。メディアコマースでは、商品購入を「メディア体験の一部」に昇華させ、UGC(ユーザーによる口コミや投稿)の発生を促すことが重要です。購入者が「買ってよかった!」で終わるのではなく、「この体験を誰かにシェアしたい!」と思わせる仕掛けが、次の集客に繋がります。
事例:Mr.Beastの「Feastables」
世界的な人気YouTuberであるMr.Beast氏が展開するお菓子ブランド「Feastables」は、この「体験化」をうまく行っています。
例えば、自社の商品(チョコレート)を、彼のYouTubeチャンネルやAmazon Prime Videoで配信される大規模リアリティ番組「Beast Games」シーズン2への「応募券」になるというキャンペーンを実施しました。

この場合、ファンにとって、このお菓子を買う行為は、単なる「おやつ」の購入ではありません。Mr.Beastの世界観に参加し、彼の壮大なイベントに参加するための「参加券」を買う行為になります。
購入者はその体験に熱狂し、こぞってSNSで投稿します。商品がUGCを生み出す装置として完璧に機能しています。
Mr.Beastのような壮大なことはできなくても、本質は同じです。Shopifyでは、SNSを組み合わせて、以下のような体験を実装することができます。
- 商品購入者だけが参加できる、オンラインの「開発秘話」イベント。
 - 商品を使ったフォトコンテストの開催。
 - 同梱物に、次のメディア企画の「予告」や「謎解き」を忍ばせる。
 
ステップ5:モニタリング&改善
最後のステップは、これら一連の施策を「やりっ放し」にしないことです。メディアコマースは、従来のECサイトよりも追うべき指標が複雑になります。
モニタリングすべきKPI
- エンゲージメント(いいね、コメント、シェア数):メディア体験の「質」は下がっていないか?
 - リスト登録数:見込み客は順調に「資産」化されているか?
 - メディア経由のECサイト送客数・売上:導線は正しく機能しているか?
 - UGC数:購買体験は「シェア」されるほど魅力的か?
 
これらのKPIをモニタリングし、常に「顧客がメディア体験としてのコマースを楽しんでいるか?」 そして 「ビジネスとして収益構造は作れているか?」 という2つの視点で課題をチェックし、改善を続けます。
まとめ
この記事では、Shopifyストアの「トラフィックはあるのに売れない」という課題を解決するための「メディアコマースモデル」について、その理論と具体的な5つのステップを解説しました。
要点
- メディアとコマースを分断せず、「商品購入をメディア体験に組み込む」ことが成功の鍵。
 - メディアコマースは「コンテンツ」と「見込み客リスト」という2つの資産を蓄積し、継続的な成長を実現するモデルである。
 - 成功には「文脈に合った商品」、「シームレスな導線」、「体験としてのリスト化」、「購買の体験化(UGC創出)」、「モニタリングと改善」の5つのステップが不可欠。
 
次の具体的な一歩を踏み出すために
「理論はわかったが、自社の場合はどこから手をつければ良いかわからない」
「このモデルを実践するためのリソースが足りない」
もしそう感じられたなら、ぜひ一度、私たちStoreHeroにご相談ください。StoreHeroの「Shopify無料ストア診断」では、Shopify運営のエキスパートが、あなたのストアの現状をヒアリングとデータに基づいて丁寧に分析。今取り組むべき最も優先度の高い課題と具体的な施策をご提案します。
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