最近話題になっているNFTと、私たちの行なっているコマースとの関連性や違いなどについて考察します。ShopifyとNFTの関わりについても紹介したいと思います。
NFTについて
ご存知の方もいるかと思いますが、NFTはNon-Fungible Token(非代替性トークン)の略であり、ブロックチェーンの新たな活用方法の一種です。
デジタル上のアートなどの創造物は、当たり前ですがコピーが簡単で、それゆえそこに対する希少性を見出すのが難しいというのが今までの状態でした。
そこで、デジタルの情報と、その所有権をブロックチェーン上で紐付け、明確に所有者を定義できるようにしたのがNFTです。
また、ブロックチェーン上で定義されているので、所有権の売買が簡単に行えます。
ブロックチェーン上でのプログラム次第では、売買される金額の一部をそのデジタルアートの作製者に還元する、というような仕組みも可能で、作製者にとっても2次流通の旨味がある、というものになっています。
NFTの事例
NFTが最初に話題になった時は、主な対象はデジタルアートでした。投機的な動きも強く、70億円でNFTが売れた!などのようなニュースがもっぱらでした。
そこから今では活用法は様々となり、NFTを所有していることによる特典や、ステータスシンボル的な存在、また保有者のコミュニティの形成なども行われています。
例えば、「Bored Ape Yacht Club」という猿をモチーフにしたNFTのプロジェクトがあり、プログラム的に10,000個のそれぞれ特徴の違う猿の画像のNFTが発行されています。
ここでは、NFTの価値を高めるために様々な工夫がなされています。
具体的には、
- NFT保有者が、twitterのアイコンを自身のNFTの画像にする文化がある。
- NFT保有者限定のコミュニティ形成を行なっている。実際にニューヨークでパーティーやコンサートを行うこともあった。
- 猿のNFTから犬のNFTを生み出せたり、猿のNFTを変異体にさせたりなどができる。
- NFT保有者限定の期間限定のモバイルゲームがリリース予定で、商品は高額商品になるとのこと。
などがあります。
実際、これによって、このNFTの人気はうなぎのぼりで、一番最初は2万円程度で売られていたNFTが、今では平均で約2000万円ほどの価値がついています。
また、別のプロジェクトである「Axie Infinity」は、購入したNFTのキャラクター同士を実際に戦わせるゲームで、ゲームに勝つと実際に儲けることができます。
従来のコマースとNFTの共通点と違う点
以下、「Bored Ape Yacht Club」のタイプのNFTと、従来のコマースの比較をしていきます。
さて、従来のコマースですが、商品ごとに売り方は違うものの、一番理想の売り方としては、
お客さんに商品やブランドのファンになってもらい、その人自身にリピーターになってもらうのはもちろんのこと、さらにそのお客さんが周りに広めていってもらうことです。
高価格帯のブランドは、そのブランドの商品を持っていることがステータスシンボルとなり、またその保有者で集まりを開くこともあります(メルセデス・ベンツクラブなど)。
この部分は、従来のコマースと、NFTで共通点が多く見受けられます。
ここからは違いについて考えていきます。
NFTでは、販売するものがブロックチェーン上のデータである、ということが重要で、そのデータを使って何かオンライン上のイベントやゲームを行ったり、そのNFTを転売することが容易になっています。
もちろん今までの通常の小売でも、転売や、購入者限定のイベントは行うことはできましたが、そのハードルは全く異なります。
ハードルが下がるだけで、産業構造の転換は起こり得ます。自家用車の普及によって、郊外に行きやすくなり、その結果ユニクロなどの郊外の専門店が台頭したり、スマホの普及によってインターネットにアクセスしやすくなったことにより、様々なインターネットサービスが爆発的に普及しました。
「ハードルが下がるだけ」のインパクトは想定外にあるのです。
また、コミュニティがうまく形成されたり、ステータスシンボルになることで、ブランド価値の上昇を狙うという点では両者とも似ていますが、その目的が異なります。
従来のコマースでは、ブランド価値が上昇し、商品が良く売れるようになって欲しいという目的があります。これはあくまでも販売者の目的です。
一方で、NFTでは、2次流通でのNFTの価値が高まることが目的です。これは2次流通での販売者となるNFT保有者の目的でもあり、そこから一部還元を受け取ることができる販売者の目的でもあります。
このように、ブランドの価値形成のメリットが販売者と保有者で一致すること、より保有者が周りにアピールしやすくなり、コミュニティも活性化しやすいのがNFTの特徴です。
確かに今までのコマースでも、ロレックスの時計を買って、将来高くなればいいなと思っている人はいるかもしれませんが、周りにアピールしたところで、コミュニティが急に大きくなったり、転売価格が大きく変わるわけではないです。
なので、このブランド価値上昇のメリットを保有者が享受できるというのも、元がデジタル資産であるためコミュニティがオンラインで大きくなりやすく、かつブロックチェーンで管理されているため、2次流通が容易で盛り上がりやすい、ということの効果であるとも言えます。
shopifyでもNFTを発行、販売できる
なんとshopifyでもNFTの発行や、販売ができるようです。(2021年11月現在β版です)
実際に、NBAのシカゴ・ブルズがNFTをshopifyを使い販売し、90秒で完売したようです。
NBAのシカゴ・ブルズが初のNFTの販売をShopifyのオンラインストアで開始
現在のNFTの販売の主流は、OpenSeaなどのようなマーケットプレイスです。
従来の小売でも、amazonのようなマーケットプレイスから自社ストアの流れを作ってきたshopifyが、NFTでも同じくその機会を窺っているのでしょう。
確かにNFTの方が価値観やコミュニティをより重視しなければいけないので、自社ストアで販売することは理にかなっていますが、一方でNFTは2次流通が大きな意味を持つので、単にshopifyでNFTを作れて販売できるようになっただけでは完全ではないです。
自社サイトで2次流通の機能を持っている有名なものとしてはAxie Infinityですが、構造としては現在のshopifyとは全く違うので、どこまでshopifyは踏み込んでくるのでしょうか?
感想
NFTの保有者の基本的な共通認識としては、将来価値が上昇するから保有しよう、というものです。
その共通認識から生まれる熱狂は凄まじいものがあるということは感じつつ、私の従来の小売の販売者の感性からすると、純粋な購入でないと感じてしまう部分もあります。
しかし、その感性もいずれ古い考え方となっていくのでしょう。
今回はNFTと従来のコマースを比較してはみましたが、売るものがそもそも違うので、どちらが優れているというのではなく、それぞれ新しい手法を取り入れながら、市場を拡大させていくのだろうと感じています。
また、shopifyが現在はまだNFTへの進出を探っているような段階に思えますが、NFTの1次流通のところまでをきっちり取りに行くのか、またはより大きな2次流通のマーケットまで手を伸ばすのか、楽しみにしています。
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