コマース事業者の成長を支援するStoreHeroにおいて、戦略を担う「グロースパートナー(GP)」と対をなす存在、それが「グロースオペレーション(GOps)」です。
技術的な実装、オペレーションの自動化、そしてデータの整備――。GPが描く成長シナリオを、絵に描いた餅で終わらせず、確実な成果へと着地させる「実行部隊」のリーダー・津田さんに、その仕事の全貌をインタビューしました。
なぜStoreHeroのGOpsは面白いのか? 技術者から見たGPの凄みとは? そして、チームが目指す「最強の実務集団」の正体とは。StoreHero代表の黒瀬が深く掘り下げます。
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「コードを書く」だけではない、GOpsの仕事
黒瀬:まずは、津田さんが率いる「GOps(グロースオペレーション)」チームが、普段具体的にどのような業務を行っているのか教えてください。
津田:一言で表現するなら、「グロースパートナー(GP)を技術面・実務面で全面的にサポートし、施策を具現化する役割」です。ただ、これは単に「言われたものを作る」という意味ではありません。
具体的な業務は大きく分けて3つあります。
1つ目は、プログラミングを用いた高度な実装と改修です。
Shopifyには便利なアプリがたくさんありますが、標準機能だけでは実現できない独自の要件も多々あります。そうした際に、「Shopify Flow」や「Mechanic」というアプリに独自のスクリプトを書いたりして、機能の隙間を埋めていきます。また、広告のオフラインコンバージョンの計測のために、Googleスプレッドシート上でGAS(Google Apps Script)を書いてデータを連携させるような裏側の仕組み作りも行います。
2つ目は、要件定義と設計です。
例えば、「初回購入者にだけ特定のアンケートを取りたい」という要望があったとします。すぐに実装に入るのではなく、「そもそもなぜそれをしたいのか?」「どのデータをトリガーにするのが最適か?」「取得したデータをどう活用するのか?」といった手順とゴールを整理し、技術的な落としどころを定義します。
3つ目は、オペレーションの構築と自動化です。マーチャント(事業者)様の手作業を減らし、ミスなく回る仕組みを作ることです。
黒瀬:かなり守備範囲が広いですね。具体的に、GPと連携して成果が出た事例などはありますか?
津田:人気アパレルブランド様の事例が分かりやすいと思います。
当時、コレクションページ(商品一覧)に「新作」や「再入荷」という枠を設けていたのですが、システム上、そこに「まだ販売開始前の商品」まで混ざって表示されてしまうという課題がありました。ユーザーからすれば、クリックしても「まだ買えません」となるわけですから、当然ガッカリしますし、広告経由で来てもコンバージョンに繋がりません。
黒瀬:機会損失だし、ユーザー体験としても良くない状態ですね。
津田:はい。そこでGPと連携し、解決に動きました。
まずGPが「現状の表示ロジックが売上にどう悪影響を与えているか」「現場の運用でどうカバーしようとして負荷がかかっているか」を分析します。
それを受けて私が、「マーチャント様が持っている商品データの『販売開始日』や『在庫状況』を参照し、今この瞬間に購入できるものだけを自動的にコレクションに含めるロジック」を組みました。
さらに、「新作」というフラグをいつまでも残しておくと鮮度が落ちるので、「フラグが付与されてから2週間経過したら自動的に消去する」という処理も、Shopify FlowとMechanicを掛け合わせて実装しました。
黒瀬:なるほど。単に表示を変えるだけでなく、その裏側にある「運用スタッフが手動でタグを外す」といった手間まで自動化したわけですね。
津田:そうです。GPは常にお客さんのストア運営状況全体を見ています。「この実装をすれば売上は上がるかもしれないけど、運用スタッフさんの作業工数が倍になったら意味がないよね」というバランス感覚をGPが持っているので、私は「技術的にどうすれば、売上アップと業務負荷軽減を両立できるか」を提案し、実装に落とし込んでいきます。
この事例では、マニュアルを作成してお客様に新しいオペレーションを説明するところまで伴走しました。
なぜ技術者は「ビジネスの現場」に惹かれるのか
黒瀬:津田さんは技術やオペレーションのスペシャリストですが、GP(グロースパートナー)に対して、どのような魅力を感じていますか?
津田:GOps視点で見るGPの凄さは、「マーチャントのソウル(魂)を深く理解し、顧客体験の『本質』を見抜いている点」にあります。
私たち技術寄りの人間は、どうしてもシステム的な制約や「できる・できない」の二元論で物事を判断しがちです。「Shopifyの仕様上、そこの表示は変えられません」と答えるのは簡単です。でもGPはそこで諦めない。「なぜ変えたいのか?」という真因を掴んでいるからです。
黒瀬:印象に残っているエピソードはありますか?
津田:以前、「配送予定日をサイト上で書き換えたい」という相談がありました。調査したところ、コーディングでは触れない領域に表示されており、技術的には「不可」と回答せざるを得ない案件でした。
しかし、GPと話していく中で見えてきた本質は、「日付を変えること」自体が目的ではなかったんです。
本当の課題は、「配送が遅れている商品を注文したお客様が、『いつ届くんだろう』と不安になって、何度もマイページを確認しに来ている。その不安を取り除いてあげたい」という、マーチャント様の顧客への想いでした。
黒瀬:なるほど。「日付の書き換え」は手段の一つでしかなかったと。
津田:そうです。目的が「顧客の不安解消」であれば、手段は他にもあります。例えば、「購入完了時の通知メールに、配送遅延に関する丁寧な注記を入れる」とか、「対象の商品を買った人だけにセグメントを切って、フォローメールを送る」といった方法です。
GPが「本当に解決すべき課題」を握ってくれているからこそ、私は「技術的に不可」で終わらせず、「それなら、こういう代替案があります」と、ソリューションを進化させて提案できるんです。この「顧客視点の徹底」こそがGPの凄みであり、一緒に仕事をしていて一番テンションが上がる瞬間でもあります。
「リソースの最大化」と「ソリューションの進化」
黒瀬:日々の業務を進める中で、津田さんが特にこだわっているポイントはどこですか?
津田:「今あるリソースの中で、ベストな解を導き出すこと」です。
課題に直面したとき、「有料アプリを入れればできます」「数百万払って開発すればできます」と言うのは簡単ですが、それはStoreHeroのGOpsとしてはあまり望ましくない姿勢だと思っています。
マーチャント様の予算や現在のアプリ構成、運用リソースを把握した上で、「今使っているこのアプリの設定を工夫すれば実現できるかもしれない」「Shopify Flowのこのトリガーを使えば、追加コストなしで自動化できる」といった工夫を凝らすこと。一見できなさそうなことでも、仕組みをハックして実現させる。それが「ソリューションを進化させる」ということであり、私たちの腕の見せ所です。
黒瀬:パズルのピースを組み合わせるような面白さがありそうですね。
津田:まさにそうです。Shopifyのエコシステムは巨大で、組み合わせは無限大です。「Shopify × LINE連携アプリ × 物流システム」のように、複数のプラットフォームが絡み合う中で、どこにボトルネックがあり、どう繋げばデータが綺麗に流れるか。それを解き明かし、実際に動く仕組みとして実装できた時は、パズルがハマったような快感があります。
GPからの相談も、「こんなことできるかな?」というフワッとしたものから、「ここのAPI連携がうまくいかない」というニッチな技術相談まで多岐にわたります。GPがビジネスの最前線で戦っているからこそ、持ち込まれる課題は常にリアルで、難易度が高い。だからこそ、それを解決できた時の貢献実感はものすごく大きいです。
チームの課題と挑戦:「属人化」からの脱却
黒瀬:現在、GOpsチームが抱えている課題や、これから取り組もうとしていることについて教えてください。
津田:正直にお話しすると、今は「リソースの限界」を感じています。ありがたいことに支援するマーチャント様の数が急増しており、これまでの「個人のスキルで、手を動かして解決する」というやり方では追いつかなくなってきています。
黒瀬:いわゆる「属人化」の壁ですね。
津田:はい。私たちが手一杯になってしまうと、GPがやりたい施策をすぐに実行できず、結果としてマーチャント様の成長スピードを鈍らせてしまいます。
そこで今取り組んでいるのが、「自分たちの手を動かさずに、高品質なアウトプットを出す仕組み作り」です。具体的には、調査業務や設定業務の「実行テンプレート」を作成し、AIを活用して業務を標準化・自動化するプロジェクトを進めています。
「どのツールを使って、どこを確認し、どういう判断基準で設定するか」を詳細に言語化し、テンプレートに落とし込む。そうすることで、私以外のメンバーや、あるいはAIであっても、私と同じ品質でタスクを完了できる状態を目指しています。
黒瀬:それが、津田さんが目指す「最強のオペレーションチーム」の姿ですか?
津田:そうです。GPが描いた最高のグロースシナリオを、何の迷いもなく、完璧に遂行できる実務集団。「このチームがついているから、絶対に売れる」とGPが確信を持てるような、強固な基盤を作りたいんです。
黒瀬:StoreHeroが大切にしている「アントレプレナーシップ(起業家精神)」の一つの形ですね。自分一人でできる範囲だけで頑張るのではなく、組織として価値を最大化するための仕組みを作る。
津田:おっしゃる通りです。自分一人がスキルアップして「私がやれば解決します」と言うのは、ある意味で簡単です。でも、それでは世界中のコマース事業者をヒーローにすることはできません。
10,000社、100,000社のマーチャント様が成長できる環境を作るためには、私たちがボトルネックになってはいけない。自分の能力を拡張し、組織の能力へと転換していくこと。それが今の私にとっての最大の挑戦です。
成長痛を楽しめる仲間を待っています
黒瀬:最後に、この記事を読んでStoreHeroに興味を持ってくれた方へメッセージをお願いします。
津田:StoreHeroは、Shopifyとグロースの領域において、日本でもトップクラスの知見と経験が得られる場所だと胸を張って言えます。私自身、入社当時は数名しかいない組織でしたが、「この人たちといれば、どこよりも詳しくなれる」という直感がありました。そして今、その直感は確信に変わり、予想以上のスピードで成長できています。
黒瀬:どんな人がこのチームに向いていると思いますか?
津田:GPを目指す方にとっては、「自分の描いた戦略を、技術で形にしてくれるパートナーがいる」という環境は非常に心強いはずです。絵に描いた餅で終わらせたくない、本気で事業を伸ばしたい人には最高の環境です。
そしてOps(GOps)を目指す方にとっては、単なる「設定代行」や「作業者」ではありません。マーチャント様のビジネスモデルを理解し、GPと対等に議論し、技術を武器に事業成長をエンジニアリングする。そんな「攻めのオペレーション」を経験できる稀有な環境です。
私はStoreHeroへの愛は社内の誰にも負けないと思っているんですが(笑)、会社としても事業としても、今はまさに過渡期であり、成長痛を感じるフェーズです。整った環境で働きたい人には大変かもしれませんが、「未完成な組織を仕組み化していくこと」や「難題を技術と知恵で突破すること」にワクワクできる方なら、きっと毎日が刺激的だと思います。
「最強の実務集団」を一緒に作り上げ、世界中のマーチャント様をヒーローにする挑戦を共に楽しみましょう。お待ちしています!
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