今回は、成長フェーズごとの注力課題とその対策、モニタリング指標について紹介します。
前回、解説したグロースワークフローという考え方は、注力課題に対してKPIを設定し、予実差を埋めるというものでした。ここで大事なことは注力課題の選定です。注力課題を見誤ると、どれだけ予実差を埋める施策を頑張っても、事業の成長に繋がりづらいためです。
今回の記事では、成長フェーズを、立ち上げ期、成長期、拡大期として分けて注力課題について解説します。立ち上げ期のゴールが月商1000万円のこともあれば、1億円のこともあり、商材や市場規模により金額は異なりますので、ご自身の市場に合わせて解釈してご活用ください。
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Contents
立ち上げ期
立ち上げ期で、注力課題になりやすいのは以下の3つです。
- リスト収集
- 勝てる広告&訴求の発見
- コアファン獲得
リスト収集
コマース事業では、顧客リストの数と質が非常に重要です。メール・LINEに関わらず、顧客リストがあれば、新商品やセールの案内をするだけで売上を大きく獲得することができます。
立ち上げ当初は、顧客リストが少ないため、直接的な売上を作ることと同じかそれ以上に顧客リストを構築することが大事になります。
顧客リストをどれだけ収集するかは、事業計画によって決まります。売上目標から逆算すれば、どれだけ顧客リストが必要かが計算できます。
1万件の顧客リストを保持している場合、メール1通あたり、顧客リストの3%がクリックをして、Revenue Per Session(1セッションあたりの期待収益)が300円であれば、メール1通あたり9万円の売上が期待できます。1ヶ月に10通のメールを送れば、90万円/月の売上です。
リスト収集には、様々な施策があります。以下で代表的なものをいくつか紹介します。
ポップアップ
注意して使えばポップアップもメールやLINEリスト作りに有効です。
サイト閲覧の邪魔になってはいけませんが、サイト閲覧して十分な時間が経過してからであればメール登録してくれる可能性があります。
ポップアップは、高度なターゲティングができるPrivyのようなポップアップ専用アプリもありますし、Shopify Formsのように無料で手軽に使えるものもあります。
また、KlaviyoやOmnisendのようなCRMアプリにも標準でポップアップが作成できる機能がついています。
ポップアップは、メールだけでなく、LINE登録を促すためにも活用することができます。
ウェイティングリスト、お気に入り
新商品や品切れ商品のウェイティングリスト登録時やお気に入り追加時にメールやLINE登録を促す方法も良く行われます。
ウェイティングリストは、Back in Stock: Restock Alertsというアプリが有名で良く使われています。KlaviyoなどCRMアプリへの連携もできます。ウェイティングリスト登録後、出荷まで時間がかかる場合は、つなぐためのメールを丁寧に配信して離脱されないようにしましょう。
お気に入りアプリも多く、単にお気に入り機能が実装されるだけでなく、メールリストの収集にも活用できます。StoreHeroでは、Wishlist Plus、Hulk Advanced Wishlist、FavoriteHeroを良く使っています。
また、Shopify FlowとCRM PLUS on LINEを組み合わせると、お気に入り登録後の通知をLINEから行う事もできます(参照記事)。
ゲーミフィケーション
クイズやゲーム、抽選などインタラクティブなアクションを起こした直後は、エンゲージメントが高まりリスト登録の提案が受け入れられやすくなります。
海外のストアでよく見る下記のようなルーレットやスクラッチなどのゲームも、Spin Wheel • CrazyRocketやWooHooなどのShopifyアプリで簡単に導入できます。
診断・クイズ
また、診断・クイズ後の結果画面の前でメールアドレスを集める施策も、ハマれば非常に効率的に収集する事ができます。メールアドレスが登録されれば、診断・クイズの回答を顧客属性情報として保管することができるため、その後のCRMの精度を高める事もできます。
診断・クイズも複雑なロジックでなければ、PersonalizeHeroやQuizify、Octaine AIといったアプリだけで実装する事ができます。
診断後に商品のレコメンドをすることが多いですが、的中率はモニタリングしたほうが良いです。診断結果の満足度が低いと、診断で集めたリストへのアプローチも効果が出づらくなるためです。
リスト収集の予実差モニタリング
前回の記事で継続的に成長するためにグロース施策をワークフロー化して運営する方法を解説しましたが、リスト収集においても、どの経路から顧客リストが何件登録されているかを計測し、予実差をモニタリングして改善します。
グロースワークフローが運用されている現場では、予実差が発生したときに、どういった手を打つかを事前に想定し、現場判断で迅速に改善しています。
例えば、診断経由のリスト登録が目標より少ない場合は、SNSやストア内から診断への誘導を強化することになっていたり、それぞれの施策が、どれぐらいの効果があるかの推計値も想定されています。
リスト収集は今回紹介したもの以外に、SNSから集客したり、リード獲得広告で集めたり、と様々なやり方があります。予実差を埋めるため、色々な施策にチャレンジし、自社にマッチしたやり方を見つけてください。
勝てる広告&訴求の発見
認知度の弱いブランド・商品が、新規顧客を獲得するためには、ニッチでも良いので、勝てる広告と訴求の組み合わせをいち早く見つけることが成長していく上でのポイントになります。
勝てる広告と訴求の組み合わせを見つける方法は、とにかくGoogleやMeta広告を使って、高速にテストをしてみることです。
製品開発時に行った顧客インタビューやアンケート結果は、広告やLP(ランディングページ)を作るときに参考になります。また、製品開発時に競合や類似商品の商品レビューや広告も調査していると、更にあたりがつきやすくなります。
最初は売上やROASが目標値に達しないかもしれませんが、丁寧に分析すると、ヒントが見つかります。
例えば、Meta広告の場合、キャンペーン全体では目標達成していなくても、広告セット単位、広告単位ではROASが達成できている可能性があります。広告セットや広告単位で達成できていなくても、オーディエンス(性別、年齢、興味関心など)、配信面までブレイクダウンすれば、達成できている可能性があります。
Google広告も同様です。キャンペーン、広告グループ、広告単位で達成できていなくても、キーワード・検索語句、オーディエンス、配信面などまで細分化すれば、目標達成できているものが見つかるでしょう。そういった細かなデータから見つけたヒントを活かし、勝てる広告と訴求を見つけましょう。
広告の予実差モニタリング
広告やLPの運用も予実差をモニタリング・ブレイクダウンして、改善点を見つけ、素早く対処して結果を作り出していきます。
StoreHeroでは、広告のモニタリングは、広告の目的別に分類してモニタリングすることが多いです。広告の目的別とは、売上を作る広告(顕在層向け)、リーチを獲得する広告(潜在層向け)、その中間の広告(中間層向け)などに分けることです。
その他、商品やコレクション(商品グループ)や、新規・リピート、アンケート回答など、顧客の属性別に広告のパフォーマンスを分類することも多いです。
こういった粒度の大きな分類で大まかに課題を把握したら、分類軸同士を掛け合わせて、問題点を絞ります。例えば、広告目的×商品でかけ合わせると、顕在層向け、かつAの商品グループが売れなくなったといったことが分かり、打ち手が考えやすくなります。
少し変わったところで、見込み客の数を表す指標として、Googleでの指名検索数、Instagramのプロフィールアクセス数などもモニタリングしています。これらの数値が高いほど、Google広告やMeta広告のパフォーマンスが出やすいためです。逆に、見込み客が少ないと、広告やLPをいくら改善しても売上は伸ばしづらいため、見込み客作りの施策が必要と判断します。
こういった方法で大まかに問題点を把握した上で、広告の管理画面内の各種指標で問題を具体的に特定します。大きな指標から細かな指標を見ることで、優先度の高い事項に絞って改善施策を検討することができます。
在庫数による打ち手の違い
広告の予実差モニタリングで、1つ注意点があります。広告を運用していると、目標以上に売れていれば、予算を追加して更に売上を上げようと考えがちですが、その判断が間違っていることがあります。
広告経由で売れている人気商品を確認すると、在庫切れ、あるいは在庫が少ない場合があります。その場合、広告予算を強めても、それ以上売れませんので、パフォーマンスが悪化してしまいます。
パフォーマンスが良くても悪くても、在庫数は確認しましょう。在庫数の確認をすると、打ち手の判断が真逆になることもあります。広告に限った話ではないですが、広告の場合、ミスったときのコスト負担が大きいため、在庫数については特に気をつけましょう。
コアファン獲得
CRMと広告は、収益計算がしやすいチャネルですが、規模が大きくなるにつれて、効率が悪くなりやすいという欠点もあります。
CRMと広告の運用中心に、成長し続けられるだけの商品力や利益構造であれば良いですが、そうでなければ、広告以外で認知を獲得する仕組みを作る必要もあります。
そこで有効なのは、UGCや口コミによる認知経路です。UGCや口コミを増やすには、まず少人数でも良いので濃いコミュニティを作ることです。
立ち上げフェーズでのファン獲得施策としては、SNSやオンラインストア上のチャット、PopUpストアなどのオフラインイベントで、顧客とのコミュニケーションを増やしたり、ギフティングを通じて商品を使ってもらい関係性を作ることが多いです。
初期にコアなファンが作れると、顧客が増えても活発なコミュニティとなり、売上のスパイクを作ってくれます。Gymsharkは、Instagramのフォロワーが400万人近くいながら、いいねが数万〜数十万件あり、コメントも数百件発生することが頻繁にあります。
機械的に実施するとコアファンはできないため、時間はかかりますが、丁寧にコミュニケーションを行って、関係性を作っておくことで、長期的に強力な資産になります。
顧客とのコミュニケーションは、顧客情報を充実させる役割もあります。注文履歴やアクセス解析のデータと違って、購入理由、不満、好みなど、顧客の本音はコミュニケーションの中でしか得るのが難しい大事な情報です。顧客情報が充実すれば、CRMや広告のパフォーマンスも高められます。
打算的なコミュニケーションは透けて見えてしまいますので、KPIに縛られすぎず取り組む事が大事ですが、順調にコアファンが増えているかは、モニタリングしましょう。Instagramのプロフィールアクセス数、投稿へのエンゲージメント、GoogleやInstagramでのブランド名の検索回数が増えているかなどを確認しておくと良いでしょう。
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まとめ
立ち上げ期で注力課題になりやすいリスト収集、ニッチに勝てる広告&訴求の探索、コアファンを増やすことについて解説しました。現在、立ち上げ期の方は、今回の記事を参考に注力課題を設定して予実差を埋める施策に取り組んでいただき、次のフェーズに進んでいただけたらと思います。次回は、ストアの成長期の注力課題とその対策について解説させていただきます。
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